2018 Fiscal Year Research-status Report
歩行運動に関与する筋活動の協調構造から探る関節間シナジーの形成メカニズム
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18K17913
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Research Institution | Yamaguchi Junior College |
Principal Investigator |
日置 智子 山口短期大学, その他部局等, 准教授(移行) (30390272)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 筋シナジー / 関節間シナジー / 歩行 / 協調構造 / 脚制御戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの歩行を観察すると一歩ごとに脚の関節軌道にばらつきがみられる。関節軌道がばらつくと足先の高さが変わってしまい転倒などが生じる恐れが出てくるが、実際にはある関節のばらつきを他の関節が補うといった協調的な働き(関節間シナジー)によって足先位置のばらつきは抑えられていることが明らかとなっている。関節間シナジーを形成するためには、関節群を動かすための複数の筋群の活動(筋シナジー)間にも協調構造が存在するはずである。本研究では、筋活動における協調構造が、足先位置のばらつきを抑える関節間シナジーの形成にどのように寄与しているのかを明らかにし、それにより歩行中の脚制御戦略を解明することを目的としている。 本年度は、トレッドミル上における歩行中の脚関節軌道データに対しUCM (Uncontrolled Manifold) 解析と CR (Covariation Analysis by Randomization) 解析を行い、歩行中のどの瞬間にどのような関節間シナジーが働いているのか、また、それらの関節間シナジーの形成に股・膝・足関節のいずれの関節が寄与しているのかを解析した。その結果、後期両脚支持期およびMTC(Minimum Toe Clearance)に働く関節間シナジーには股関節はほぼ寄与していないということを明らかにした。また、歩行およびバランスタスク中の筋群の活動から筋シナジーを推定し、歩行中の各瞬間における足圧とそれにより励起される筋シナジーの比較も行った。その結果、両タスク間で共通した筋シナジーを確認することができ、更にその役割について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、歩行データに対し、UCM解析とCR解析を行うことによって、歩行中の各瞬間に働く関節間シナジーと、そのシナジーの形成に寄与する脚関節を特定することができた。更に、歩行時とバランスタスク時に共通して働く筋シナジーとその役割について確認することができた。これらのことから進捗状況を「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、歩行中の関節間シナジーとその形成に寄与する脚関節を明らかにし、更に筋シナジーの推定を行ってきたが、令和元年以降は、推定した筋シナジー間の協調構造の有無についての解析も行う。具体的には、歩行中の筋電データから推定した筋シナジーに対してUCM解析およびCR解析を適用し、歩行の一周期における各瞬間に足先位置のばらつきを抑えるような筋シナジー間の協調構造が存在するかどうかを調査することで、歩行中に働く関節間シナジーが筋群の活動の協調により形成されたものかどうかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
物品の再見積もりを依頼した際、計画時の見積もりよりも減額された見積もりが提出されたため。また、それらについては、次年度、国際学会に参加する旅費として使用する予定である。
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