2018 Fiscal Year Research-status Report
パフォーマンス不安の形成メカニズムの解明とその応用
Project/Area Number |
18K17915
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
吉江 路子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (00722175)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 感情 / 運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
人前での音楽演奏やスポーツ試合など,他者から評価される社会的場面においてパフォーマンス不安が喚起されると,運動スキルが一時的に低下することがあり,演奏者やスポーツ選手を初めとして,多くのパフォーマーを悩ませている。本研究では,パフォーマーの周囲の他者の反応や態度がパフォーマンス不安に与える影響に着目しつつ,パフォーマンス不安による運動スキル低下を防ぐ対処法を提案することを目指している。初年度である平成30年度は,他者の反応・態度がパフォーマンス不安に与える影響を検討するための実験刺激の開発に取り組んだ。音楽演奏やスポーツ試合等の場面において,聴衆・観衆が発する歓声や笑い声等の音声はパフォーマーの心理状態に大きな影響を与えるため,このような感情的音声に着目した。まず,快感情(達成・愉快等)及び不快感情(怒り・恐怖等)を表現した非言語的音声刺激の感情判別データに対して,多変量解析を行った。さらに,日本人の感情的音声の特徴を検討するため,西洋人の感情的音声との比較を行った。日本人及びオランダ人の参加者が,日本人及びオランダ人の感情的音声刺激を用いて感情判別・評定課題を行った実験のデータを分析した結果,オランダ人は,怒りや達成という排他的感情を表現した日本人の音声を判別することが困難であった。日本のような相互依存的文化では,対人関係に関する文化的規範により,排他的感情の音声伝達様式が特異的となっていることが示唆された。こうした感情表現の文化差は,パフォーマンス不安の検討を進める上で考慮すべき要因の一つだと考えられる。本成果は,Emotion誌に原著論文として掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,他者の感情的反応の影響を検討するための実験刺激の開発に取り組み,刺激の特徴を詳細に検討した。そして,これらの分析結果の一部を原著論文として発表した。以上のように,おおむね順調に成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,他者の感情的反応の影響を検討するための実験刺激の開発に取り組んだ。今後は,こうした刺激を利用した実験系を開発し,他者の反応がパフォーマンス不安に与える影響を検討していきたい。
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Causes of Carryover |
今年度は,他者の感情的反応の影響を検討するための実験刺激の開発やデータ分析に取り組んだため,次年度使用額が生じた。次年度以降,実験系の構築や実験実施に関わる物品費や人件費・謝金に使用する予定である。
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