2019 Fiscal Year Research-status Report
慢性的ストレスの指標となる新たなバイオマーカーの探究
Project/Area Number |
18K17923
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中西 香織 大阪大学, キャンパスライフ健康支援センター, 助教 (10650872)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ストレス / 健康障害 / クロトー |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性的なストレスはメンタルの不調だけでなく、心血管疾患、消化器疾患、メタボリックシンドロームなど様々な疾患や健康障害を増悪させるリスク因子であることは広く知られている。しかし、ストレス状態を示す客観的な指標となるバイオマーカーについては明らかにはなっていない。 これまでに慢性的ストレスの一つである喫煙習慣と老化遺伝子として知られているαクロトーの関与に着目し、喫煙というストレスによりαクロトーの血中濃度が上昇させることを発見・報告した (Scientific Reports, 2015)。そこで今回、ストレス・生活習慣とαクロトーとの関係性に着目し、ストレスや生活習慣がαクロトーにどのような影響を及ぼすか検討を行った。 基礎疾患のない非喫煙者を対象とし、身体計測や各種サイトカインの測定を含む血液検査、問診による生活習慣調査、またうつ病・不安障害などの精神疾患のスクリーニングとして開発された質問票で、心理的ストレスを含む何らかの精神的な問題の程度を表す指標として利用されているKessler 6 (K6) スコアを問診項目に取り入れ、血清αクロトー値との関連について解析を行った。「ストレス管理ができていない」「睡眠で充分な休養が取れていない」と回答した群で血清αクロトー値が有意に上昇していたことから、精神的ストレスや睡眠状態が血清αクロトー値に影響を及ぼしている可能性が考えられた。炎症の関与も考えられた事から精神的ストレスや睡眠状態が炎症性サイトカインIL-6に影響するかについても同様の解析を行ったが、血清IL-6には明らかな変化は認められなかった。さらに血清αクロトー値は、精神的ストレスや睡眠状態における関係性についてK6スコアと同様の傾向を示したことから、血清αクロトー値の上昇はストレス状態を予見している可能性があることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
慢性的なストレスは現代社会において大きな問題となっているが、今までストレスを客観的に評価する確立された明らかな指標は確立されていなかった。今回、ストレスや睡眠の質が血中の老化関連分子αクロトーに影響を与えることを発見し、ストレス状態を示す新しいバイオマーカーとして、血清αクロトーが今後利用できる可能性があると考えられた。また、その他の予定についても順調に達成されている。
|
Strategy for Future Research Activity |
血清クロトー値が喫煙習慣によって増加し、またストレスのバイオマーカーとなる可能性もある事から生活習慣や受動喫煙などによって血清クロトー値の動態がどのように変化するかも確認を行っていきたい。
|
Causes of Carryover |
各種サイトカイン・増殖因子の測定を次年度に繰り越すこととなったため。
|
Research Products
(3 results)