2020 Fiscal Year Research-status Report
ニューギニア高地人腸内細菌叢の低蛋白食適応機構に関する研究
Project/Area Number |
18K17929
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Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
小川 亜紀 甲南女子大学, 医療栄養学部, 助教 (80612308)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ニューギニア / 低蛋白質 / 腸内細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニューギニア島のインドネシアTimika地域に現存する、サゴヤシを主とする伝統的な低蛋白質摂取の食習慣をもつ民族は、身体つきは低蛋白質栄養状態を呈しているようには見えない。Timikaの市街地には、同じ民族でも米を主食とする現代の一般的な食生活(十分量の蛋白質摂取量と考えられる)の人々も居住している。本研究では、Timikaのサゴヤシを主とする食習慣の男女(Sago群、n=25)と、米を主とする食習慣の男女(Rice群、n=25)を調査対象とした。現地での調査にはインドネシア人研究者の協力が得られた。 食事調査の結果、エネルギー摂取量はRice群とSago群で有意差はなかった。Sago群の方が、蛋白質摂取量は有意に少なく、炭水化物摂取量は有意に多かった。両群とも蛋白質摂取量は日本人の摂取基準より少なかったが、特にSago群では日本人の摂取基準の40~50%程度と大きく下回っていた。Rice群とSago群の間で、身体計測値、筋肉量、体脂肪量、エネルギー消費量などの身体組成に有意な差は認められなかった。血清アルブミン値はRice群とSago群で有意な差は認められず、両群とも正常値であった。以上の結果から、Sago群では、低蛋白質摂取の食習慣であるにも関わらず、筋肉量や血清アルブミン値に低蛋白質栄養状態を示す所見は見られないことが明らかになった。Sago群の人々は何らかの低蛋白質食適応機構をもつと考えられ、腸内細菌叢の解析を行うこととした。 生物多様性条約と名古屋議定書のルールに則り遺伝資源(インドネシア人の糞便検体および抽出DNA)を日本へ輸送する際に必要となるABSに関する手続きを経て、現在、日本において腸内細菌叢の次世代シーケンスメタゲノム解析を進めている。低蛋白質食適応に寄与する腸内細菌が明らかになれば、サルコペニアの改善などに応用する研究へ繋げられると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、今般の新型コロナウイルス感染症予防対策に関する対応のため、腸内細菌叢の解析を行うための準備と実験の実施を予定通りに進めることはできなかった。しかしながら、長期の時間を要していたABSに関する手続きを完了することができ、インドネシアから日本への糞便検体の輸送が完了し、腸内細菌叢の解析に着手できたことによって、研究が完全に止まってしまうことはなく進めてこられたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、2018年度~2020年度の3年間計画の研究であったが、今般の新型コロナウイルス感染症の蔓延に対応するための研究期間延長の措置を申請し、1年間の研究期間延長が認められた。腸内細菌叢の解析を中心に研究を進め、論文としての発表を見据えて結果をまとめていく。
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Causes of Carryover |
腸内細菌叢の解析に着手したが完了していない。次年度には解析を終える計画である。
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Research Products
(4 results)