2019 Fiscal Year Research-status Report
運動が全身のミトコンドリアの適応をもたらすメカニズムの解明
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18K17941
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
北岡 祐 神奈川大学, 人間科学部, 准教授 (30726914)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 運動 / ミトコンドリア / エクサカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
高強度運動後にマウスから採取した血清を骨格筋培養細胞に添加すると、ミトコンドリア呼吸機能(酸化系)だけではなく、解糖系によるエネルギー産生能も高まることが確認された。つまり、運動後の血液には、細胞のATP産生能を高める因子が含まれていると考えられる。そこで、マウスにエクソソームの分泌を阻害するGW4869を投与し、高強度運動直後に採取した血清の添加実験を同様に行ったところ、ミトコンドリア呼吸機能の増加が抑制されることが明らかとなった。したがって、運動効果をもたらす因子の少なくとも一部は、運動刺激によってエクソソームに含まれる形で血液中に分泌されると考えられる。さらに、血清サンプルからエクソソームを抽出し解析する実験を進めている。 また、高強度運動時に血中濃度が高まることのよく知られている乳酸に着目し、サラブレッドに乳酸を投与する実験を行った。その結果、乳酸投与後に採取した中臀筋サンプルにおいて、ミトコンドリア新生のマスター遺伝子であるPGC-1α(Peroxisome proliferator-activated receptor gamma coactivator 1-alpha)の遺伝子発現が高まることが確認された。また、乳酸投与後にトレッドミル走行を実施したところ、運動中の血中乳酸濃度は生理食塩水投与と比較して乳酸投与によって高値を示したが、運動によるPGC-1αの発現増加への乳酸投与の影響はみられなかった。しかしながら、運動直後の血中乳酸濃度とPGC-1αの発現レベルとの間には正の相関関係がみられたことから、乳酸濃度がミトコンドリアの適応の指標として有用である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
阻害剤を用いた実験によって、運動効果をもたらす因子はエクソソームに含まれる可能性が高いことを明らかにできたから。
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Strategy for Future Research Activity |
骨格筋培養細胞だけでなく、他の組織由来の細胞でも同様の効果がみられるのかを検証するのとともに、エクソソームに含まれる物質について解析を進めていく。
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Causes of Carryover |
想定よりも安く実験消耗品を購入することができたため。次年度には骨格筋細胞だけではなく、脂肪細胞など他の細胞を用いた実験を行うことから、そのために必要な消耗品の購入のために使用する予定である。
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Research Products
(3 results)