2018 Fiscal Year Research-status Report
The effects of vitamin E on adipocyte differentiation and the mechanisms.
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18K17942
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 理恵子 神奈川工科大学, 応用バイオ科学部, 助教 (80579962)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Tocopherol / ビタミンE / ベージュ脂肪細胞 / 褐色脂肪細胞 / 熱産生型脂肪細胞 / UCP1 / PGC-1α |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ビタミンEがベージュ脂肪細胞の分化と機能に与える影響を検討している。2018年度は、まずα-tocopherol、γ-tocopherol及びδ-tocopherolが熱産生能に与える影響について3T3-L1細胞を用いて検討し、δ-tocopherolが最も顕著にUCP1の発現を誘導する事を明らかにした。 δ-tocopherol添加細胞ではPGC-1αの核内移行が亢進しており、δ-tocopherolがPGC-1αの活性化を促進する事が示唆された。また、PGC-1αのノックダウンによってδ-tocopherolの効果がキャンセルされる事から、δ-tocopherolによるUCP1の発現誘導はPGC-1αの発現誘導と活性化を介しているものと推察された。そこでPGC-1α活性化因子への影響について検討した結果、δ-tocopherol添加細胞ではp38 MAPKの発現量が有意に増加していた。また、p38 MAPKのタンパク質発現量とリン酸化もδ-tocopherol添加細胞で亢進しており、δ-tocopherolの効果はp38 MAPKの阻害剤処理によっても抑制される事を明らかにした。一方で、Tocopherolがベージュ脂肪細胞の分化を制御するmicroRNA(miR-133, miR-138, miR-155, miR-196a, miR-696)の発現に与える影響について検討した結果、予想に反してPGC-1αの発現を抑制するmiR-138とmiR-696の発現量はα-tocopherolとδ-tocopherolを添加した細胞において増加傾向にあった。この結果はTocopherol添加細胞においてPGC-1αの発現が増加した事によるフィードバック機構であると示唆され、Tocopherolの作用機序には直接関与しないもとの考察する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画の通り、ビタミンE同族体による分化促進効果の比較検討を行い、δ-tocopherolが培養細胞レベルで最も顕著にUCP1の発現を誘導する事を見出した。また、δ-tocopherolによる効果がPGC-1αの活性化を介しており、その活性化にはp38 MAPKのリン酸化亢進が関与する事を明らかにした。上記の研究成果は、学術論文として既に報告済みである(Biochemical and Biophysical Research Communications, 506, 53-59, 2018)。 Tocopherolがベージュ脂肪細胞の分化を制御するmicroRNA(miR-133, miR-138, miR-155, miR-196a, miR-696)の発現に与える影響についても予定通りに検討を進めた。結果として、これらのmiRNAの発現をTocopherolは抑制せず、δ-tocopherolによるUCP1の発現誘導効果には直接関与しないもとの推察している。また、当初はベージュ脂肪細胞における効果のみを検討する予定であったが、現在は褐色脂肪細胞においてもTocopherolが熱産生能を向上させるか予備検討を進めている。これまでの検討で、ラットの褐色脂肪初代培養細胞をTNF-αで刺激して炎症を惹起すると、UCP1の発現量が低下する事を確認している。この系を用いて、各種ビタミンE同族体が褐色脂肪細胞においても保護効果を示すか検討する準備が整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、肥満モデルマウスにおけるTocopherol摂取の効果を中心に検討を進める。マウスに高脂肪・高ショ糖食(HFSD)またはHFSD+α-tocopherol食、HFSD+δ-tocopherol食を4ヶ月に渡り摂取させ、体重推移や脂肪組織重量、血中脂質濃度等を比較する。また、白色脂肪組織(腎周囲脂肪組織、鼠蹊部皮下脂肪組織)におけるUCP1、PGC-1α及びPGC-1α活性化因子の発現量を定量する。さらに脂肪組織の病理組織学的検査や蛍光免疫組織染色を行い、δ-tocopherolの摂取によって脂肪組織の褐色化が促進するか明らかにする。 上記のモデルマウスにおいては、褐色脂肪組織の白色化や炎症が進行しているものと予測される。そこで褐色脂肪組織を採取し、炎症関連タンパク質やUCP1の発現量を定量する。さらに病理組織学的検査を行い、Tocopherolの摂取が褐色脂肪組織においても熱産生能に影響を与えるか検討する。動物実験と並行して、ラットの褐色脂肪初代培養細胞を用いた検討も進める。褐色脂肪細胞における熱産生機構は、炎症時にERK/MEK経路を介して阻害される事が報告されている。ビタミンEは様々な組織において抗炎症効果を示す事から、炎症シグナルを抑制する事でUCP1の発現低下を改善する可能性が期待される。培養細胞レベルでは炎症によるUCP1の発現低下に対し、ビタミンE同族体が保護効果を示すか検討すると共に、その作用機序の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
物品購入時の端数として生じた15,706円は、次年度の物品費として使用する。
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Research Products
(4 results)