2019 Fiscal Year Research-status Report
The effects of vitamin E on adipocyte differentiation and the mechanisms.
Project/Area Number |
18K17942
|
Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
田中 理恵子 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 薬剤治療研究部, (非)研究員 (80579962)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | Tocopherol / ビタミンE / ベージュ脂肪細胞 / 褐色脂肪細胞 / 熱産生型脂肪細胞 / UCP1 / PGC-1α |
Outline of Annual Research Achievements |
褐色脂肪組織(BAT)はエネルギーを熱として放散するラジエーターのような器官であり、体温保持や代謝調節に寄与している。成人ではBATの体積とBMIの間に負の相関が見られる事から、抗肥満研究のターゲットとしても注目されている。本研究ではビタミンEが熱産生型脂肪細胞の分化と機能に与える影響に関する検討を行っており、これまでにビタミンE同族体の一種であるδ-tocopherolが白色脂肪細胞において脱共役タンパク質UCP1の発現を誘導する事を明らかとしている。また、δ-tocopherolによるUCP1の発現誘導はPGC-1αのリン酸化亢進を介している事を明らかとした。そこでPGC-1αの上流因子となる各種リン酸化酵素、脱アセチル化酵素、miRNA等の変動を解析した結果、PGC-1αのリン酸化がp38 MAPKの活性化に起因する可能性を見出し報告した(BBRC, 506, 53-59, 2018)。一方で、PGC-1αの発現を抑制するmicroRNA(miR-138及びmiR-696)の発現量はTocopherol添加細胞において増加傾向にあった。この結果はTocopherol添加細胞においてPGC-1αの発現が増加した事によるフィードバック機構であると示唆され、Tocopherolの作用機序には直接関与しないものと推察する。 2019年度は生体レベルにおける効果を検討し、δ-tocopherolの摂取が肥満モデルマウスにおいて脂肪細胞の肥大化や血中脂質濃度の上昇を抑制する可能性を見出した。また、δ-tocopherol摂取マウスでは褐色脂肪組織におけるUCP1の遺伝子発現量が有意に増加した。そこでラット褐色脂肪初代培養細胞を用いてTocopherolの効果を検討した結果、δ-tocopherolが炎症刺激によるUCP1の発現低下を抑制する可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の研究実施計画の通り、肥満モデルマウスを用いてTocopherol摂取の抗肥満効果を検討した。マウスに高脂肪・高ショ糖食(HFSD)またはHFSD+α-tocopherol食、HFSD+δ-tocopherol食を摂取させ、体重推移と脂肪組織重量、血中脂質濃度等を比較した。Tocopherolの摂取はマウスの最終体重に影響を与えなかったが、血中コレステロール濃度はδ-tocopherol食の摂取により低下傾向にあり、病理組織学的検査においては腎周囲脂肪組織と褐色脂肪組織における細胞の肥大化が抑制された。 δ-tocopherol摂取群の褐色脂肪組織においてはUCP1の遺伝子発現が有意に増加していた。そこでラットの初代培養系褐色脂肪細胞を用いてTocopherol添加の影響を検討した結果、δ-tocopherolがTNF-α刺激によるUCP1の発現低下を抑制する事が明らかとなった。現在はδ-tocopherolによる効果が抗炎症作用を介しているか検討を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究結果より、δ-tocopherolが炎症による褐色脂肪細胞の機能低下を抑制する可能性が示唆された。そこで2020年度は、ラットの初代培養系褐色脂肪細胞を用いてさらに詳細な検討を進める。まず褐色脂肪細胞においてもTocopherolの添加がPGC-1αのリン酸化、核内移行を亢進し、UCP1発現を誘導するか検討する。褐色脂肪細胞における熱産生機構は、マクロファージ浸潤による炎症刺激の後、ERK/MEK経路を介して阻害される事が報告されている。ビタミンEは様々な組織において抗炎症効果を示す事から、炎症シグナルを抑制する事でUCP1の発現低下を改善する可能性が期待される。褐色脂肪細胞にTNF-αを添加し炎症を惹起すると、PGC-1αとUCP1の遺伝子発現量及びタンパク質発現量は有意に減少する。2019年度の予備的検討において、α-tocopherol及びδ-tocopherolを添加した細胞では炎症刺激によるPGC-1αとUCP1の発現低下が有意に抑制された。そこでビタミンE同族体の保護効果が抗炎症効果を介しているかを明らかにすると共に、その作用機序の解明を目指す。 ビタミンE同族体のうち、側鎖に不飽和結合を有するTocotrienol類の効果についてはこれまで未検討である。3T3-L1細胞において、δ-tocotrienolはδ-tocopherolと同様にPGC-1αとUCP1の遺伝子発現を誘導した。Tocotrienol類はTocopherol類よりも脂肪細胞に取り込まれやすい事、特に褐色脂肪組織に顕著に蓄積する事が報告されている。2020年度は肥満モデルマウスを用いて、Tocotrienol摂取の効果についても検討を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
物品購入費の残額として生じた。残額は次年度の物品費として使用する。
|
Research Products
(4 results)