2019 Fiscal Year Research-status Report
食事性肥満による消化管運動障害の解明と新たな治療法の開発
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18K17945
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Research Institution | Health Science University |
Principal Investigator |
志茂 聡 健康科学大学, 健康科学部, 准教授 (80734607)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 消化管運動障害 / 高脂肪食 / アウエルバッハ神経叢 / SBF-SEM / 3次元再構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究では、高脂肪食摂取が腸管筋間神経叢においてVaricosityのシナプス動態の異常を惹起することに加えて、糖吸収阻害薬フロリジンが腸管筋間神経叢に保護的に作用することを明らかにした。本年度は、さらに詳細な軸索構造を明らかにするため、筋間神経叢内の軸索におけるリソソームの3次元構造解析を行った。また、比較検討のためストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病モデルマウスの筋間神経叢の3次元的再構築による解析を行った。 4 週齢から高脂肪食の給餌を開始し、20 週齢まで飼育された肥満糖尿病モデルマウス(高脂肪食群)を用いた。一部は、フロリジンを試料採取の前日および当日に皮下投与した。対照群として、通常食で飼育された同週齢のマウス(通常食群)を用いた。さらに、比較検討のため4 週齢にSTZ腹腔投与を行い20週まで飼育されたマウス(STZ群)を用いた。麻酔下で小腸を採取し、OTO法によるブロック染色を行い樹脂包埋した。その後、SBF-SEMを用いて連続断層像を取得し、リソソーム数、表面積および体積を解析した。 軸索内リソソーム表面積および体積では高脂肪食群と通常食群に著明な変化は認めなかったが、リソソーム数では高脂肪食群で有意な減少を認めた。一方、高脂肪食群フロリジン投与後は、リソソーム数に有意な増加を認めた。STZ群の3次元的再構築では、高脂肪食群と類似した軸索Varicosityの減少とともに、一部の筋間神経叢では断片化した瘤状の軸索が確認された。高脂肪食摂取により、耐糖能異常が引き起こされた前糖尿病期において、軸索のリソソーム動態の異常を惹起すること、さらにSTZ群の解析により高脂肪食群で観察された軸索Varicosityの減少が、軸索の断片化への前段階となっている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SBF-SEMによる3D電顕試料作製については、コンダクティブエポン処理を行うことによりコントラスの高い電顕像での取得することができた。これらの試料は、連続ブロック表面走査型電子顕微鏡 [Zeiss Merlin、Sigma、自然科学研究機構生理学研究所] を用いて、腸管神経叢の超微細立体構造の解析を継続的に取得することができている。免疫組織化学的解析(PGP9.5、synaptophysin、c-Kit)については、昨年度実施できなかったパラフィン切片上での定量解析を本年度導入したセルカウント機器を用いて行うことにより、高脂肪食群および通常食群ともに効率よくデータ解析を行うことができた。一方、当初予定していた(1)平滑筋収縮能の解析を目的とした筋張力計測および(2)自発活動の解析を目的としたslow wave計測の2つの生理学的解析については、実験群の腸管壁が非常に薄く、電極固定が難しいため安定した電気的活動を計測することができなかった。さらに、生理学実験に関する研究協力者の人事異動にともない、研究実施の環境整備に多くの時間が必要となった。結果的に実験は予定よりも若干の遅れを持って進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫組織化学的解析では、高脂肪食摂取およびフロリジン投与が腸管筋間神経叢内の神経伝達物質にどのように影響を与えるかさらに詳細な検討を行うため、高脂肪食群および通常食群のパラフィン包埋試料を用いて、各種神経伝達物質(NOS、VIP、Substance P、ChAT)等の免疫染色を行う。さらに、本年度のSTZマウスを用いた実験により、高脂肪食群ではみられなかった断片化した瘤状の軸索が神経叢内に確認されており、SBF-SEMを用いてこれらの軸索瘤の3次元微細構造解析を行う。現在これらの画像解析では、構造抽出のセグメンテーションがマニュアル(手動)で行っているため、今後は解析データを増やしていくとともに、セミオート(半自動)もしくはオートセグメンテーション(自動)ソフトの導入も検討し、画像解析方法の効率化を進めていく予定である。一方、遅滞している生理学実験については、研究協力者の助言を受け再度実験方法の検討を行うとともに、消化管通過実験等の代替実験も合わせて検討していく。
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Causes of Carryover |
本年度は、解析が遅延していたセルカウントのための導入費が主な支出となり、当初予定していた生理学実験関連の費用は削減となった。今後は、さらにデータの取得と解析を進めるとともに引き続き積極的な成果発表を行っている予定であり、これらの費用として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)