2018 Fiscal Year Research-status Report
加齢に伴う脳内セリン合成能低下による脂質代謝変動と病態発症機序の解明
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18K17950
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐矢野 智子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (20733934)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脂質代謝異常 / セリン欠乏 / 加齢 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳内のセリン合成酵素Phgdhの発現量は加齢に伴い減少すること、またセリン欠乏は、細胞障害作用を持つ新奇スフィンゴ脂質1-デオキシスフィンガニン(doxSA)の産生を促すことなどが明らかとなっていることから、老化に伴う脳内セリン合成能低下は、脂質代謝恒常性の破綻を介したアルツハイマー病等の加齢性脳神経系疾患への脆弱性増加や病態進行促進に繋がる可能性があると考えられる。本研究は、セリン欠乏が誘発する脂質代謝異常が病態へ関与する可能性と、その分子基盤、また、セリンの病態防御因子としての役割を明らかにすることを目的に、実験的検証を行うものである。 解析には、Phgdh KO胚由来線維芽細胞: KO-MEF(Phgdh KOマウス胎児より樹立した不死化線維芽細胞:セリン含有培地で野生型と同等に増殖可能)を用いた。 まずセリン欠乏に伴うシグナル伝達系経路/転写制御系の詳細な分子機序を明らかにするため、遺伝子発現解析を行った。その結果、脂肪酸合成やコレステロール合成に関わる遺伝子の発現が、セリン制限 (6h, 24h)培地で培養した細胞で有意に変動していることが明らかとなった。中でも特にコレステロール合成の最終段階に関わる酵素の遺伝子発現が顕著に減少しており、これはタンパク質発現解析でも確認できた。 また、セリン欠乏は、細胞レベルで増殖能低下・細胞死といった表現型を呈すが、ある脂質をセリン制限培地に添加すると細胞増殖能が回復することが明らかとなったことから、今後、この脂質が関わる経路について詳しく解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究機関を移ったことで環境(使用できる設備や機器)が大きく変わり、検体採取が完了していないが、これまでに採取できた検体からの予備検討で有用な結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、セリン欠乏が脂質代謝に及ぼす影響を遺伝子/タンパク質発現解析および活性化レベルの測定により明らかにしていく。また、セリン欠乏により産生される細胞障害性スフィンゴ脂質、doxSAに応答する情報伝達系候補の選出並びにdoxSAの標的分子の同定を行うべく、doxSA添加実験を行い、遺伝子/タンパク質発現解析からdoxSAの関与する情報伝達経路を決定していく。 さらに、セリン制限培地下において、コレステロール合成酵素の著しい発現低下が認められたことから、実際にセリン欠乏によりコレステロール含量の低下が認められるかを、脂質分析により確認する。 セリン欠乏に連関した脂質代謝基盤の解明を通して、セリン欠乏が誘発する脂質代謝異常が、正常細胞に及ぼす影響及び病態へ関与する可能性を明らかにしていくことを目指す。
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Causes of Carryover |
初年度に行えなかった脂質分析の費用に充てるため、次年度使用額とした。 次年度の脂質分析の費用に充てる。
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Research Products
(1 results)