2018 Fiscal Year Research-status Report
mTORシグナル抑制を介した認知機能改善戦略―モデルマウスを用いての検討
Project/Area Number |
18K17965
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
住吉 愛里 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (40782404)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | mTOR / テオブロミン / SAMP8マウス / 高齢マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、アルツハイマー病による認知機能低下にはmTORシグナルの過剰な活性化の関与が指摘されている。私たちの研究グループはこれまで培養細胞を用いたin vitro研究でテオブロミンやカフェインがmTORシグナルを抑制することを報告した。さらに、ラットを用いたin vivo実験でテオブロミンの作用を検討した結果、テオブロミン含有飼料(0.05%W/W)を摂取したラットの脳では、mTOR活性の指標であるリン酸化mTORの量が減少すること見出した。さらに、テオブロミンがマウスの記憶・学習行動を促進すること、脳内の脳由来神経栄養因子(BDNF)を増加させることを報告した。 そこで本研究では、1)学習・記憶障害を呈する老化促進モデルマウス(Senescence Accelerated Mouse Prone 8: SAMP8)およびその対照マウスである正常老化マウス(Senescence Accelerated Mouse Resistant 1: SAMR1)、さらに2)高齢マウス(23~24ヶ月齢)を用いて、テオブロミン含有飼料摂取がマウスの認知機能を改善するか否かを明らかにする。さらに、mTORシグナルを含む分子メカニズム解析や形態学的解析も加え、総合的にテオブロミンの効果を解明することを目的とした。 その結果、テオブロミン含有飼料を摂取したSAMP8マウスにおいて、通常飼料を摂取したSAMP8マウスと比べ、短期記憶が改善することが行動実験から明らかになった。さらに、脳(大脳皮質、海馬)やその他の組織、血液を採取し、mTORシグナル(リン酸化mTOR量、mTORの下流分子であるリン酸化4E-BP1量など)、BDNF量などをウエスタンブロット法や免疫組織化学法等で検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度計画では、老化促進モデルマウス(SAMP8)および正常老化マウス(SAMR1)を用いて、テオブロミン含有飼料摂取後に行動実験(Y迷路・Novel Object Recognition test)を行い、認知機能改善効果を検証することであった。これら行動実験が滞りなく終了し、その後マウスの血液や組織採取を行った。 また、高齢マウスを作成する為、現在正常マウスを長期間飼育し、23~24ヶ月齢になるまで飼育する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
SAMP8マウスにおいて、テオブロミン含有飼料を摂取したマウスの短期記憶が、通常飼料摂取マウスと比べて改善したことから、リン酸化mTOR量の減少、BDNF増加が期待できる。平成31年度は、採取した組織や血液を用いて、mTORシグナル(リン酸化mTOR量、mTORの下流分子であるリン酸化、4E-BP1量など)や、BDNF量を測定する予定である。 さらに、23~24ヶ月齢の高齢マウスを用いて、SAMP8マウスと同様の実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
以前の研究で使用していた試薬が残っており、それらを使用した為、当初の使用額より抑えられた。 測定値が安定していなかった生化学項目があった為、再度条件検討を行う予定である。その為、試薬購入を予定しており、次年度に使用額が生じた。
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