2018 Fiscal Year Research-status Report
筋萎縮に対する新規栄養学的アプローチ:鉄代謝とエネルギー産生系をつなぐ観点から
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18K17968
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
内田 貴之 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (00803561)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アコニターゼ / ミトコンドリア / 筋萎縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢や消耗性疾患によって引き起こされる筋萎縮は、高齢化社会の進展に伴いますます大きな問題となってきている。申請者はこれまでの研究で、萎縮筋では酸化ストレスによるミトコンドリアの機能低下、TCA回路の障害が引き起こされていることを明らかにしてきた。このようなTCA回路の障害は、ミトコンドリアの酵素アコニターゼ活性の低下が一因であると考えられる。アコニターゼは、生命維持に必須である細胞内鉄濃度の調節と、TCA回路の律速酵素としてエネルギー代謝を制御する、二つの機能を併せ持っている。そこで本研究では、このミトコンドリアの酵素アコニターゼに着目し、筋萎縮の進展に果たす役割を解明し、アコニターゼを標的とした筋萎縮治療法について検討する。 本年度は、培養細胞系を用いた実験と、筋肉特異的アコニターゼノックアウトマウスのコロニー確立を中心に作業を行った。培養細胞系を用いた解析では、アコニターゼのノックダウンにより、遅筋型のミオシン重鎖タンパク質の減少が認められ、これには細胞内ATPレベルの低下が関与していることが示された。細胞内エネルギー産生をモニタリングできるフラックスアナライザーを用いた解析においても、アコニターゼをノックダウンした細胞では、コントロール細胞と比較して特に最大酸素消費量の著名な低下が認められた。さらに、アコニターゼのノックダウンはミトコンドリアの形態異常を誘導することも明らかとなった。 これらの実験結果は、アコニターゼが細胞内エネルギー代謝の中心であるミトコンドリアの障害を通して、遅筋型ミオシン重鎖タンパク質の分解を誘導していることを示唆している。遅筋繊維はミトコンドリアを豊富に含むため、特にミトコンドリア障害の影響を受けやすいと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筋細胞レベルにおけるアコニターゼの筋萎縮への影響性検討については、申請書の計画に従い、アコニターゼをノックダウンした筋細胞でのエネルギー代謝・筋タンパク質動態を中心に解析を進めている。個体レベルでのアコニターゼの影響性についても予備的な検討を進めている。筋肉特異的アコニターゼノックアウトマウスの解析結果と併せて、次年度中には筋肉におけるアコニターゼを中心としたエネルギー・鉄代謝連関の解明が達成できると考えている。これらを総合的に判断して「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、アコニターゼの活性を回復させるフラタキシンや、レスベラトロール等の抗酸化成分を用いた、アコニターゼの機能回復による筋萎縮阻害・予防効果について検討する。上記について、培養細胞系を用いた実験を中心に行い、並行して筋肉特異的アコニターゼノックアウトマウスのコロニーを確立し、個体レベルでのアコニターゼの筋萎縮への影響性を検討する。ノックアウトマウスを用いた動物実験では、尾部懸垂による機械的負荷減少刺激や、高脂肪食負荷によるエネルギー代謝異常刺激を加えた際のコントロールマウスとの比較検討を行う。メタボローム解析によるエネルギー代謝経路の網羅的解析や筋繊維の断面積・繊維タイプの変化、ミトコンドリアの形態制御に関わるタンパク質の発現変化などの解析を予定している。
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Causes of Carryover |
平成30年度に予定していた動物実験のうち、ノックアウトマウスの網羅的解析は匹数が確保できず行えなかった。そのため、当該実験で使用予定であった試薬等の購入費を平成31年度で使用予定である。
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Research Products
(9 results)