2018 Fiscal Year Research-status Report
慢性疾患での受容段階スケールの開発と実用化:受容-ホープ-セルフケアの機序解明
Project/Area Number |
18K17970
|
Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
栗田 宜明 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (80736976)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 受容 / うつ / 心理学的柔軟性 / 慢性疾患 / 慢性腎臓病 / 尺度開発 / 臨床疫学 / AAQ-II |
Outline of Annual Research Achievements |
[研究1.受容段階の概念確立に向けた先行研究の系統的レビューと項目プールの作成] 慢性疾患の受容段階の確立や尺度開発に有用な先行研究を検索した。慢性疾患対象に、喪失・拒絶・葛藤・折り合い・受容を提唱するモデルがあった。これらの知見を参考に、受容段階を測定する項目プールのパイロット版を、尺度開発の経験のある医師・心理学者らで作成した。
[研究2.アウトカムとしての受容スコア:既存尺度の妥当性の評価]調査を進める中、心理学的柔軟性を測定するAAQ-IIが、炎症性腸疾患などの慢性疾患で受容を評価するために活用されていることを見出した。そこで、慢性疾患のモデル疾患として、保存期慢性腎臓病、血液透析患者、腹膜透析患者に対して、AAQ-IIの質問紙票調査を行っている多施設データを得た。433名を対象に、AAQ-IIの合計得点の平均をとって反転させた後(1:受容が低い、7:受容が高い)、一般線形モデルで分析を行った。年齢・性別・原疾患・併存疾患などで補正しても、保存期慢性腎臓病に対して、血液透析患者、腹膜透析患者のAAQ-IIの得点はそれぞれ0.4点、0.3点低いことが明らかとなった。この結果から、腎臓代替療法を要する状態まで疾病が進むと、疾病を受容しにくくなると考えられた。
[研究3.要因としての受容スコア:既存尺度の妥当性の評価]次に、同じ集団を対象に、うつ症状スケール(CES-D)の二値変換を行ったアウトカム変数に対して、AAQ-IIを説明変数とする一般化線形モデルで分析を行った。年齢・性別・原疾患・併存疾患などで補正しても、AAQ-IIの得点が高くなるほど、うつ状態は少ないことが明らかとなった(AAQ-IIが1ポイント増加する度の有病割合比=0.67)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の開始後に、慢性疾患を対象とする受容段階の新たなモデルを提案する英語の文献が発表されたこと、既存の尺度をもちいて慢性疾患の受容の測定を試みる臨床研究が発表されたことをふまえて、当該尺度の慢性疾患における妥当性の検証を新たに必要とした。概ね計画通りと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
インタビュー調査に基づいた質的研究に精通する研究協力者の協力を得て、受容の段階に関する半構造化インタビューを進めたい。 うまく研究が進まない時には、アプローチ可能なフィールドで得た受容としてのAAQ-IIの調査を縦断的に継続し、ホープや臨床指標の関係を評価したい。
|
Causes of Carryover |
慢性疾患を対象とする受容段階の新たなモデルを提案する英語の文献が発表されたこと、既存の尺度をもちいて慢性疾患の受容の測定を試みる臨床研究が発表されたことをふまえて、調査方式を見直したうえで、受容の段階に関する半構造化インタビューを次年度に行うこととしたため。
|