2020 Fiscal Year Research-status Report
ビオチンによるβ酸化調節因子ACC2制御機構解明とメタボリック症候群予防への応用
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18K17974
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Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
湯浅 正洋 長崎県立大学, 看護栄養学部, 助教 (00756174)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ビオチン / 褐色脂肪組織 / β酸化関連酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの検討では,サプリメントレベルでのビオチン長期投与により,ラットのエネルギー消費量と肝臓・褐色脂肪組織(BAT)のカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT)活性の上昇や,肝臓・血漿中性脂肪濃度の低下が観察され,ビオチンは抗メタボリック症候群のための栄養療法に寄与できる可能性が示唆された.そこで,2020年度においては,エネルギー消費量上昇のメカニズムの一端を明らかにすることとした.先行研究にて肝臓CPT活性の上昇に寄与する可能性が高い因子として,アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)2の遺伝子発現量低下が観察されたことから,Acc2とその転写因子であるSterol regulatory element binding protein 1aの遺伝子発現量を定量したが,肝臓・BATのこれら遺伝子発現量に変化は認められなかった.研究開始当初は,Acc2発現の変化が起因して,脂肪消費量やエネルギー消費量が亢進すると推定していたが,ビオチンによるエネルギー代謝亢進作用には,ACC2発現は影響しない可能性が示唆された.次に,CPT活性上昇がみられた肝臓・BATにおいてβ酸化関連酵素の遺伝子発現量を測定したところ,肝臓においてはそれらの発現量がほぼ変化しておらず,BATにおいていくつかの遺伝子発現が上昇していたことから,ビオチン投与によるエネルギー消費量上昇のメカニズムの一端として,BATのβ酸化活性化が関与する可能性が示唆された. 他方,ヒトにおけるビオチン投与を想定した場合,毒性の有無を確認すべきである.そこで本研究では肝毒性の有無を確認したが,ビオチン投与群では,血漿AST・ALT活性や肝臓の繊維化・炎症・酸化ストレスマーカーの遺伝子発現量に変化は認められず,本研究で採用したビオチン投与量は少なくとも肝臓に対して毒性が生じる可能性は小さいことが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度の研究進捗がやや遅れている最大の理由は,コロナ禍による遠隔授業対応など,例年にない業務の増加である.また,当初推定していたAcc2遺伝子発現変動が本研究では観察されず,エネルギー消費量上昇のメカニズムの類推に時間を要した.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度までの検討では,ビオチン投与によるエネルギー産生組織への影響として,特にBATへの影響が大きいことが観察された.今後は,ビオチン投与の影響として,以下について主に解析する予定である;①BAT活性化因子の遺伝子発現量の測定,②エネルギー消費上昇に対する交感神経の影響の有無,③各種組織におけるビオチン含量の定量.以上の検討結果とこれまでの研究成果を統括して,ビオチン投与によるエネルギー代謝亢進の分子メカニズムの一端を評価する.
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナ禍による遠隔授業対応などの例年にない業務が増え,全体的に研究の進捗が遅れた.また,当初推定していた影響が本研究では観察されず,別の分子メカニズムの類推に時間を要した.そのため,2020年度に予定していた実験の一部などを次年度に実施するために,次年度の使用額(繰越金)が生じた.使用計画としては,今後の研究の推進方策に記載した内容の実験に充てる予定である.加えて,研究代表は2021年度より長崎県立大学から神戸大学に研究機関を移したが,長崎県立大学には設置されていたが神戸大学には設置されていない,共用の共通機器類や統計解析ソフトなどの購入にも,繰越予算を充てる予定である.
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Research Products
(1 results)