2018 Fiscal Year Research-status Report
思春期における睡眠習慣(時間・時間帯・質・環境)が精神機能に与える影響の理解
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18K17992
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
小塩 靖崇 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部, 流動研究員 (10807085)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 思春期 / 睡眠習慣 / メンタルヘルス |
Outline of Annual Research Achievements |
千葉県で行われている「生活習慣と心の健康に関する調査」の参加者(小中学生4144名及びその保護者1997名)を対象に研究を行なった。「生活習慣と心の健康に関するアンケート調査」は、アンケートを用いた調査研究である。小学1-4年生は自宅で保護者が記入、小学5-6年生, 中学1-3年生は学校にて自身で記入、保護者は自宅にて自身で記入するものである。今回、2389名(12-15歳)の中学生のデータを用い、精神的健康度と睡眠習慣の関係を調べた。精神的健康度の指標は、SMFQ(Short Mood and Feelings Questionnaire)を用いた。睡眠習慣には、平日休日の睡眠時間、就寝起床時刻を用いた。SMFQを従属変数に、平日の睡眠時間、平日と休日の睡眠時間帯の違い、平日の睡眠負債が調整された休日の睡眠中央時刻を独立変数とした回帰分析を施行した。 その結果、平日の睡眠時間と平日と休日の睡眠時間帯の違いはSMFQと有意に関連し、睡眠負債が調整された休日の睡眠中央時刻はSMFQとの関連は示さなかった。この関係は、性別で層化しても同様に示された。さらに、睡眠指標とSMFQの関係性を調べるため、GAM(General Additive Model)を用いて解析した。その結果、睡眠時間とSMFQはU字型、平日と休日の睡眠時間帯の違いは線形関係を示した。この結果も男女同様であった。つまり、先行研究で指摘されていた平日の睡眠時間(Ojio et al. 2016)だけでなく、平日と休日の睡眠時間帯の違いが大きいこと、特に平日より休日で睡眠相が後退していることも、思春期の若者の抑うつリスク要因である可能性を示した。今後、縦断データを集め、時間的因果を含めた睡眠習慣と精神的健康度の関係を検討する。さらに、睡眠時間短縮や平日休日の睡眠時間帯のズレを生みだす要因を明らかする方法を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた精神的健康と睡眠習慣の関係性の検討は順調に推移し、調査実施校と密な連携により、縦断でのアンケート調査の実施を当初の計画通り実施し、既存のデータの連結も完了している。これらの研究成果は、令和元年度に論文化可能である。さらにアンケート調査は継続実施の承諾と、仮説に応じた調査項目の追加にまで持っていける議論ができたことから、総合して当初の計画以上に進展していると考えられる。 当初計画していた生活記録は、調査実施校との連携や実施可能性を重視し、現在学校現場で使用している生活記録を参考にするなど実施方法の検討を行なった。当初計画していた保護者調査については令和元年度に実施可能か再度検討する。当初計画していた加速度計を内蔵した小型モニタリング機器により睡眠覚醒リズムと睡眠の質の評価については、上記に注力していたため遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、連結された縦断データ及びデータ数を増やした解析を当初の計画に沿って実施する。睡眠時間短縮や平日休日の睡眠時間帯のズレを生みだす要因を検討し、論文化を行う。今後のデータ取得については、研究協力校と引き続き相談しつつ、調査研究の継続に支障のない範囲で行えるか判断する。
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Causes of Carryover |
当初の計画にあったデータ入力に対する人件費・謝金を、業者委託として使用したため、人件費・謝金は使用なしとなっている。研究協力校での調査継続のための連携を重視し、加速度計を内蔵した小型モニタリング機器は初年度に使用しておらず、計上していた物品費は使用していない。次年度は、調査票の印刷及び取得したデータ入力は初年度と同様に業者委託するため、その他の項目での助成金使用となることが想定される。加速度計を内蔵した小型モニタリング機器を使用する場合には、物品費として使用する。研究協力校との調整の必要性を判断し、必要の場合は旅費の使用を検討する。
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