2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K18004
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Research Institution | National Institute of Informatics |
Principal Investigator |
横井 優 国立情報学研究所, 情報学プリンシプル研究系, 助教 (60805480)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アルゴリズム / ゲーム理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では以下の2つのテーマについて研究を行った.
1:求人者と求職者の間のマッチング市場のような,各参加者が戦略的に行動する中でマッチングが形成されていく状況をゲーム理論的にモデル化し,解析を行った.具体的には,逐次的にジョブオファーを受ける求職者が,競合相手の戦略を考慮しながら諾否を決定していく状況を,展開型ゲームとして定式化し,その均衡において得られるマッチングの計算複雑度を調べた.求人者や求職者の希望リスト長という指標によって,計算複雑度が特徴付けできることを示した.さらに,形成されるマッチングが安定性(ある種の公平性を表す性質)を満たすオファー順の設計法を与えた.これらの結果は,動的マッチング市場での均衡が,一般には計算困難であること,および,適切な制御を加えることで安定化可能であることを表している.
2:多対一のマッチングモデルは,医師の病院への配属決めなどに応用をもつ数理モデルである.各病院が受け入れる医師の人数に関して,上限のみでなく下限を設けるような設定は,応用上も重要であり,近年盛んに研究されている.このモデルでは,全ての下限制約を満たす安定マッチングは必ずしも存在しないことが知られている.本研究では,医師の選好が同順位(タイ)を許すような状況において,下限制約の違反度合いを最小にするような安定マッチングを計算する問題を扱った.一般の場合にはこの問題はNP困難であり,近似すら困難であることを示した.入力に制限を加えた場合(選好リストを完全リストに限った場合)の計算複雑度については未知であり,今後考察していく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の「研究実績の概要」で1つめに挙げた課題の内容は,当初の計画には含まれていなかったが,共同研究者とのディスカッション中に着想を得て,研究を遂行することとなり,興味深い結果を得られた.2つめの課題については,予想と異なる結果が得られたため,設定を変更して取り組んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
上記の「研究実績の概要」で2つめに挙げた課題の内容については,当初は近似アルゴリズムを設計する予定であったが,その困難性が理論的に示されたので,問題設定を変更して取り組んでいる. また現在,制約を導入した多対多のマッチングモデルにおいて,サイズ最大の安定マッチングを計算する問題に取り組んでおり,解決の見通しが立っている.
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