2018 Fiscal Year Research-status Report
「鳴く」生物の省エネルギー戦略に潜む数理法則の解明と応用
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18K18005
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
合原 一究 筑波大学, システム情報系, 助教 (70588516)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 数理モデリング / 生物音響学 / バイオミメティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
生物の発声行動における省エネルギー戦略の研究を進めた。生物には、メスを呼ぶためにオスが大きな声で鳴くものが多く存在する。初年度は、ニホンアマガエルの発声行動を中心に実験研究・理論研究を進めた。まず、実験データを解析することで、ニホンアマガエルは合唱のあいまで一斉に休んでいる性質を見出した。このような現象を内部自由度と周囲の状況に応じて確率的に自身の状態を切り替えるハイブリッドな力学系として記述し、実験結果を定性的に再現した。次に、この数理モデルを無線センサネットワーク上での通信方式に応用した。無線センサネットワークは多数のセンサ付き無線端末で構成されており、端末ごとの消費電力の削減が長時間のデータ収集に必須である。そこで、上記のカエルの合唱モデルを無線センサネットワーク上の通信方式とみなした数値シミュレーションを行い、ネットワーク全体の低電力化への有用性を検証した。本研究成果は、査読付き学術論文1件として公表し、筑波大学と大阪大学からプレスリリースした。 一方で、本研究課題で着目しているサテライト行動についても、音声刺激と視覚刺激を同時に提示する実験システムを構築し、ニホンアマガエルのオスの反応を引き出すことに成功した。また、サテライト行動の数理モデリングについても、さまざまな生物についての文献調査を進め、数理モデルの枠組みを検討した。これらの予備的な研究成果についても、関連学会にて成果を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発声行動と鳴かない状態の切り替えについて、実験と数理モデリングの両面からバランスよく進められた。一方で、サテライト行動についても、予備実験と数理モデルの枠組みの検討が十分に進められた。また、査読付き学術論文や学会などで研究成果を発表した。これらの実績から、初年度についてはおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の計画通りに研究を進めていく。サテライト行動に関する実験と数理モデリングを中心に、フィールド調査に時間を割くことで、生物の省エネルギー戦略を実験データに基づいて研究していく。また、提案モデルの応用についても研究を進め、通信技術関連の学会や研究集会で発表し、さまざまなフィードバックを得ていく予定である。
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Causes of Carryover |
家庭の事情によって長期の出張が難しくなり、予定していたフィールド調査が実施できなかった。同様のフィールド調査は、所属する筑波大学近辺で実施したため研究遂行に支障は出なかったが当該経費を次年度に繰り越した。
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Research Products
(8 results)