2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K18016
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
原瀬 晋 立命館大学, 理工学部, 嘱託講師 (80610576)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 擬似乱数 / モンテカルロ法 / 準モンテカルロ法 / マルコフ連鎖モンテカルロ法 / 計算統計 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.マルコフ連鎖準モンテカルロ法のためのCUD近似点集合について、計算機によるパラメータ探索を行い、ギブスサンプラーに適用して数値実験を行った。先行研究として、Chen氏ら(2012)は、短い周期のTausworthe擬似乱数発生法を準備し、一周期使い切った際に現れる格子構造を利用して、CUD近似点集合として使用する方法を提案した。Chen氏らの論文では、一様性の評価指標として、高次元均等分布性を採用したが、本研究では、より高い収束性を保証する(t,m,s)-netのt-値に拡張し、最適化を行った。Tausworthe法は二元体F2上の2つの多項式の組(P(x),Q(x))をパラメータに持つが、2次元のt-値はQ(x)/P(x)の正則連分数展開の部分商の次数によって決定される。そこで、手塚-伏見(1993)の理論に帰着させ、連分数の観点から2次元のt-値の最良の点集合を絞っておき、その中から3次元以上で良い点集合を全数探索し、概ね満足いくパラメータが見つかった。加えて、ギブスサンプラーに適用し、バグがない限り、既存の方法と同等か、それ以上の収束性の向上が見込める可能性のあることが分かってきた。特に、点集合の構成方法については、2018年7月のモンテカルロ法国際会議MCQMC2018で、研究成果発表を行った。 2.投稿中であった32ビットメルセンヌツイスタ(MT)法の倍精度浮動小数点出力に関する論文について、レフェリーの指示に従って改訂を行い、Elsevier発行のMathematics and Computers in Simulationに掲載が決定した。 3.ここ数年継続してきた、Sobol'列の比較研究の論文が完成し、Walter de Gruyter発行のMonte Carlo Methods and Applicationsに投稿し、出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マルコフ連鎖準モンテカルロ法のCUD近似点集合のパラメータ探索については、研究代表者の予想通り、比較的筋の良いパラメータが見つかったと考えられる。ただし、かなり込み入ったプログラムを作成する必要があり、バグを出さないためには、確認作業に細心の注意と時間を要する。国内外の関連研究者に、パラメータテーブルを渡して、複数人でチェックする体制を整えることが望ましい。 一方、前研究課題から継続してきた32ビットMT法の倍精度浮動小数点変換に現れる問題点、並びに、金融工学の数値計算におけるSobol'列の比較に関する2つの研究を完成させ、論文の出版に至った。前者の研究では、32ビットMT法の出力を連結して53ビット浮動小数点出力に変換する際、理論的評価指標である上位ビットの高次元均等分布性が低下する。この原因の解析を行い、合わせて、ラグをつけたMT法の連結出力が、通常の32ビット出力に比べ、より低い次元において、複数の統計的検定(系列検定・行列ランク検定など)で棄却されることを示した。MT法が棄却される統計的検定が明らかになったことに加え、一般論として、安易に出力の連結を行ってビット数を増やす実装方法に警鐘を鳴らす意義があると思われる。後者のSobol'列の比較研究では、非常に面白い現象が判明した。最新の結果として、Faure-Lemieux(2019)は、F2上のNiederreiter列の生成行列の行を入れ替えて、行列の上三角化を行うと、パラメータの探索を行わなくても、すでに最適化されたSobol'型の点列が得られることを示した。この点列を実装して、本研究に取り込み、先行研究の論文では触れられていなかった金融工学の様々な数値積分に適用して、有効性を示した。合わせて、2次元プロジェクションのt-値の頻度分布(特に、外れ値)を精査し、数値積分の収束性との関連性を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
マルコフ連鎖準モンテカルロ法の研究では、次の方策を考えている。まず、現時点で、数値例として、2次元正規分布のギブスサンプラーのtoy exampleを用いて有効性の検証を行っていた。一定の手ごたえが得られたため、より複雑なベイズ統計の実問題に対して数値実験を行い、有効性を検証したい。次に、生成速度の高速化である。先行研究の論文には記載されていなかったため、研究を進めるうちに分かってきたこととして、Tausworthe法を定義式通りに実装すると、あまり速く点列を発生できない。これを打破する高速化の手法として、1980年代に伏見正則先生を中心に開発された横型系列・縦型系列の理論があり、Tausworthe法と等価な出力を持つGFSR法に直して実装すると、それだけで高速化が予想される。また、1980年代と異なり、現在では、メモリが潤沢に使えるため、別の高速化技法も考えられる。最終的に、これらの成果をソフトウェア(パッケージ・ライブラリ)として実装し、使える形に整理する。以上の推進方策は、1本の論文にまとめるには、あまりにも分量が多いため、結果が出てきた順に、2本以上の論文に分割公表する方向を考えている。 もう1つの研究課題として、擬似乱数統計的検定ライブラリTestU01の64ビット化を挙げていた。近年、Sebastiano Vigna氏により開発された、状態空間の小さなF2-線形漸化式の出力に非線形変換を施したXorshift128+などの64ビット擬似乱数発生法が、下位ビットの統計的検定で棄却されることが発表された(Lemirea-O'Neill, 2019)。この結果の追試を行うとともに、研究代表者の持っている擬似乱数の性能評価の手法を使って、原因を説明できないか、考えてみたい。
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Causes of Carryover |
広島大学大学院理学研究科・松本眞教授の基盤研究(B)・連携探索型数理科学「諸科学における一様性と超一様性の利用」の連携研究者となっており、フランスで開催されたモンテカルロ法の国際会議MCQMC2018にて研究成果発表を行った際、松本教授の基盤研究(B)から旅費を支出して頂いたため、未使用額が発生した。次年度以降、モンテカルロ法の国際会議への参加、国内外の研究者との打ち合わせ旅費、数値実験及びソフトウェア開発を行うための計算機環境の整備、論文投稿の際の英文校正など、引き続き研究費の使用を計画している。
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Research Products
(4 results)