2018 Fiscal Year Research-status Report
インポータンスサンプリングの拡張による実ネットワークの高精度品質計測技術の開発
Project/Area Number |
18K18035
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
渡部 康平 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (10734733)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ネットワーク / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
ネットワークの通信品質を正確に計測する技術は,多くのネットワーク管理・運用技術の基礎となっているが,高信頼ネットワークのパケット廃棄など発生確率が非常に小さい事象 (稀事象) に関する統計量の計測は,未だ技術課題となっている. 本研究では,シミュレーショ ンの高速化・高精度化技術として発展してきたインポータンスサンプリング (Importance Sampling; IS) を,実ネットワーク計測の領域に拡張し,稀事象に関する統計量を従来の 10 倍以上の精度で計測する技術を開発する.ISの技術を活用して,計測対象とは異なる条件のネットワークのシミュレーションを行いつつ,得られた結果を計測対象のネットワークのものに変換する.従来のネットワークシミュレーションにおけるISは,その適用対象が極めて限定的なトラヒックに限定されていたが,本研究で提案する技術は,任意のトラヒックに適用可能であるため,実トラヒックデータを利用したシミュレーションも可能である. ここまでの研究成果により,ISを任意の通信トラヒックに適用可能に拡張する方法が確立した.この方法の有効性は,単純な構成のネットワークにおいてすでに確認しており,実データを含むデータセットで,従来の数十倍の精度でパケット廃棄率の推定が可能であることがわかった. 提案する技術により,従来技術のサンプリングでは見逃されてしまう稀な パケット廃棄や遅延を短い時間で計測することが可能になり,新たなネットワーク管理・運用技術開 発の可能性が開かれる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インポータンスサンプリングを任意のトラヒックに適用可能に拡張する数学的枠組みが検討できており,本研究のキーとなる技術はすでに確立している.加えて,確立した数学的枠組みをシミュレーションとして実装し,非常に単純なG/M/1/Kシステムにおいて有効性が確認できている. 有効性の確認は,単純なポアソントラヒックのみならず,実トラヒックデータにおいても完了しており,適用範囲の広さも示すことができた.この結果は,1年目の研究計画通りの進捗であり,順調に進捗していると言える. 研究成果については,すでに部分的な成果を,当該分野における Top conference であるICNP 2018 と IC 2018 のポスターセッションで発表している.両会議ともに,査読付きの会議であり,本研究の基礎理論が他の研究者の目から見ても,有用であることが伺える.加えて,フルペーパーの国際会議,及び論文誌への投稿も準備中である.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,基本的な数学的な枠組みは確立したものの,その有効性は非常にシンプルなネットワークのシミュレーションに限られている.そのため,一般のネットワークに適用するためには,まだいくつかのハードルが存在する. まず,より複雑なネットワークトポロジに対応するために,G/M/1/Kのように1入力1出力のシステムではなく,他入力のシステムに対応する必要がある.ここまでの研究で提案してきたISに一般性を持たせるための数有学的な枠組みは,他入力他出力のシステムに自然に拡張できるように設計しており,用意に拡張できる.そのため,2年目以降は,拡張した数学的枠組みの有効性を様々なシステムに対して検証していく必要がある. また,ここまでの研究で,実トラヒックデータ,及びシミュレーショントラヒックのトラヒックパターンが膨大となり,パターンの頻度分布の算出が難しくなる問題も明らかになってきている.この問題を解決するために,重要性の低いトラヒックパターンを1つにまとめる方法と,巡回セールスマン問題を活用して生成トラヒックを最適化する方法を検討する.
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Causes of Carryover |
国際会議及び論文誌の投稿は概ね予定通りであったものの,査読,修正と出版までに時間を要し,投稿料の支払いののタイミングが後ろにずれ込んだため,残額が生じた.2019年度以降に入ってから支出予定であり,研究計画及び支出計画に大きな問題は生じない.
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