2018 Fiscal Year Research-status Report
生体内バイオナノセンサネットワークのための感染型信号増幅伝播方式
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18K18039
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡家 豊 大阪大学, 生命機能研究科, 特任研究員 (10614125)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 分子通信 / バイオナノセンサネットワーク / 信号増幅伝播方式 / IoBNT |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生物由来の素材からなる数ミクロンから数十ミクロン程度の大きさの自律移動型センサを用いて構築される、生体内バイオナノセンサネットワークを、既存の情報通信ネットワークと統合することを目的とする。生体内バイオナノセンサネットワークにおいて、生体内の重要かつ微弱な信号を検出し、それを外部機器に届けるための感染型信号増幅伝播方式を設計した。信号の発生源は病気の細胞やウィルスなど、外部機器は既存のコンピュータネットワークと通信可能な埋め込み型機器を想定している。この通信方式では生体信号を検出した送信機が受信機に信号を伝達し、最終的に外部機器に信号を伝播する際、環境中に存在する中継機を利用する。 提案方式は、次のように動作する。(A)送信機は分子信号を環境中に放出することによって通信可能領域が形成される。(B)通信可能領域に入った中継機は信号を受信し、信号を伝達するために分子信号を放出する。(C)各バイオナノマシンのランダムな移動により、通信可能領域は動的に変化する。(D)受信機の付近に、信号を受け取った中継機が到達し、受信機に信号を伝達する。 まず、この通信方式の数理モデルの構築した。提案方式によって、信号が伝播する時間や空間を分析するために、各バイオナノマシンの移動性はランジュバン方程式、環境中に存在する分子信号の強度が変化する率は微分方程式で記述した。次に、構築した数理モデルにもとづいて、計算機上のシミュレーション実験による性能評価・結果を取りまとめた。この成果から、さらに1歩進んだ実用的な応用の例として、薬物輸送システムに適用し、性能を評価した。従来の手法と比較して、より少ない数のバイオナノマシンで同程度の性能を実現できることを示した。以上の成果を論文としてまとめ、国際会議 IEEE Globecom 2018 にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定どおりに成果が出ており、特筆すべきことはなし。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方式は以下の通りである。 1.生物実験により、実際の細胞の動作パラメタを取得する。バイオナノマシンを細胞で実装することを想定し、昨年度の研究実績において構築した数理モデルに適合させ、動作パラメタ値を決定する。細胞の観察実験を行い、最尤法を用いてパラメタ値を推定する。まず、タイムラプス・イメージング法により、細胞の位置情報を2分程度の時間間隔で数日間に渡って計測する。次に、最尤法を用いて数理モデルのパラメタ値を決定する。決定したパラメタ値により、細胞の機動性(移動軌跡や拡散速度)が忠実に再現されることを検証する。再現性が低い場合は、モデルの拡張を検討する。 2.構築した数理モデルにもとづいて、再度、薬物輸送への応用に特価した計算機上のシミュレーションを行う。得られた結果が、国際会議で発表した結果と適合することを確認し、発表成果と合わせて一つの大きな知見としてまとめる。異なる知見が得られた場合、原因を究明し、妥当性の検証や改善案を打ち立てる。ここで予測される知見は、提案手法によって、より効率的にバイオナノマシンの機動性を制御し、特定の場所に集合させることができる、ということ。 3.薬物輸送への応用で得られた知見から、複数の分子信号の発信源により増幅された信号強度を、バイオナノマシンが外部機器と通信するために必要な要件として着目し、本研究の大目的である、生体内バイオナノセンサネットワークと既存の情報通信ネットワークの統合の実現可能性について、実証実験と計算機シミュレーションの側面から検証する。最終的に得られた性能や知見をまとめ、国際会議に論文を投稿する。
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Causes of Carryover |
当初、もう1回分、国際会議に参加する予定であったが、都合が合わず、参加できなかったため。
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Research Products
(1 results)