2018 Fiscal Year Research-status Report
津波減災設計のための包括的連成解析システム開発とそのV&V
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18K18062
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三目 直登 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (10808083)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 数値シミュレーション / 連成解析 / 大規模並列解析 / 耐津波設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、粘り強く健全性を維持するための構造物の耐津波設計に資するため、漂流物や波と構造との相互作用を考慮した並列連成解析システムの開発を目的としている。そのために本研究では、大規模並列連成解析システムの開発および高度化と、津波漂流物の数理モデル開発の二つに研究課題を分割し研究開発を進める。 初年度である2018年度は、大規模並列連成解析システムの開発および高度化の初期段階として、粒子法による並列自由表面流れ解析ソルバーの動的負荷分散アルゴリズムを開発し、並列化効率の向上を図った。また、津波漂流物の数理モデル開発の初期段階として、津波漂流物を剛体であるとみなした流体剛体連成モデルの構築と検証を行なった。 動的負荷分散アルゴリズムに関しては、粒子法のための並列・動的負荷分散ライブラリである LexADV_EMPS が既に存在するが、このライブラリが流体のみならず壁境界も粒子で表現されていることを前提としているのに対し、本研究では壁をポリゴン群で表現するより高精度な手法 (ポリゴン壁境界モデル) を用いているため、動的負荷分散アルゴリズムをポリゴン壁向けに拡張する必要があった。これに対して、理論的な計算量を用いる方法と、実測した計算時間を用いる方法を基にした二つのアルゴリズムを提案し、両者で動的負荷分散が正常になされ、並列化効率が向上することを示した。 津波漂流物のための流体剛体連成モデルに関しては、ポリゴン壁境界モデルを用いた流体剛体連成モデルを提案した。提案したモデルは、剛体内部に粒子を充填しなければならない既存手法と比較して、これらの内部情報を必要としないため効率性に優れると同時に、複雑な境界形状をポリゴンで表現でき、精度面においても利点のあるモデルであるといえる。また、提案したモデルの二次元のソルバーを実装し、精度検証を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、大規模並列連成解析システムの開発および高度化と、津波漂流物の数理モデル開発の二つの研究課題を実施する。概要の部分で述べたように、それぞれの課題の要となる粒子法並列自由表面流れソルバーの動的負荷分散アルゴリズムと、津波漂流物のための流体剛体連成モデルの基礎的検討が初年度にて完了している。以上のことから、三年間の課題期間を鑑みれば、順調な進展が得られていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、大規模並列連成解析システムの開発および高度化に関しては、2018年度で開発した並列自由表面流れ解析ソルバーを使用し、並列構造解析ソルバーとの連成解析モデルの開発および実装を行うことで、本研究課題の根幹をなす大規模並列連成解析システムの基盤を構築する予定である。また、ヨーロッパの粒子法研究コミュニティである SPHERIC にて実施されている実験の再現解析を行い、妥当性の検証を行う予定である。 津波漂流物の数理モデル開発に関しては、現在二次元における流体剛体連成モデルが構築されているが、それを三次元に拡張することが課題となる。また、三次元のモデルを並列自由表面流れ解析ソルバーに実装し、必要に応じて、良好な並列化効率を得るための並列アルゴリズムの開発を行う予定である。 最終的には、これらの二つの課題を統合し、構造物の高度な耐津波設計に資する解析システムを構築し、実問題への適用を目指す。
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Causes of Carryover |
概ね計画通りに予算を使用したが、研究代表者の所属の変更に伴う業務によって、年度末に使用予定であった記憶媒体等の消耗品の購入を行うことができなかった。次年度以降に、必要に応じて購入することを予定している。
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