2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K18076
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
杉本 憲治郎 早稲田大学, 理工学術院(情報生産システム研究科・センター), 講師(任期付) (00773483)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 画像処理 / グラフ / 高速フィルタ |
Outline of Annual Research Achievements |
画像撮像デバイスなどの発展に伴い、これまで広く普及した2次元画像からより一般化された多次元多チャンネル画像・点群・グラフといった多様なデータ構造の活用が進んでいる。それに併せて、多様なデータ構造に対する画像処理アルゴリズムの拡張や効率化が強く望まれる。本研究では画像・点群・グラフに対してデノイジングや特徴抽出を実現するフィルタの高度化を目指している。 当該年度は、主に理論と実装の両面からフィルタの基礎部分の性能改善に注力した。計算量がフィルタの窓長に非依存な非線形フィルタである「定数時間バイラテラルフィルタ」を主な議論の対象として、既存の行列分解の方法論に新たに特異値分解やモンテカルロ法などを取り入れた方法を提案した。特異値分解による手法は、理論的なアプローチによって必要な畳み込み回数を従来法の半分に削減しており、かつどのようなノイズモデルに対しても適用可能な点が長所である。モンテカルロ法による手法も、理論によってこれまでの1/4のランダム試行回数で従来法と同等の性能を達成した。また「定数時間」アルゴリズム以外にも、GPUの計算機構と相性がよいボリュームデータにも適用可能な高速バイラテラルフィルタも提案し、従来法より近似精度を維持しつつ10~100倍の高速化を達成した。こういった理論だけでなく実装面からも検討した。近年のCPUの計算機構に着目したフィルタ実装の効率化も検討を重ねており、最新の成果では200[fps]を優に超える処理速度を実現している。 具体的な成果として、ジャーナルレター1件、国際会議論文7件、国内会議論文1件を挙げた。レターと国際会議論文はいずれも信号処理分野で世界的に最も権威あるトップ論文誌・フラグシップ会議に採択されたほか、米Dayton大学との国際共同研究の成果も含まれており、国内外から高い評価を得ていると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の成果は計9件(ジャーナルレター1件、国際会議発表7件、国内発表1件)であった。特にレターは信号処理分野で最も権威ある論文誌に採択されており、国際会議発表のうち4件は画像信号処理分野の世界的なフラグシップ会議に採択されているなど、世界的にも十分高く評価された成果であると考えている。またこれらのうち2件は国際共同研究の成果でもあり、今後のさらなる発展も期待できる。このように着実な成果を上げていることからも進捗はおおむね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、理論と実装の両面からフィルタ性能の改善に取り組む。当該年度期間中に論文等の具体的成果につながっていない未完成のアルゴリズムもいくつかあり、これらについては早急に成果が上がるよう引き続き研究を進める。より一般化されたデータ構造である点群やグラフデータへの進展には、まだまだ多くの理論拡張が必要である。例えば上記の「定数時間フィルタ」の実現は、「二次元配列の要素アクセスが定数時間で可能である」という事実に立脚するが、これが点群やグラフデータでは通常成り立たないため、より計算オーダーの劣るアルゴリズム(例えば対数時間でのフィルタ)の調査検討が必要である。またこれまでは理論上扱いやすいガウス性ノイズを主な議論対象としたが、実データでは様々な確率分布に従うノイズが付加されるため、このような点での理論拡張も重要である。またこういった基礎的な研究成果を基にした応用についても議論を増やす必要がある。しかるべき方法論が確立でき次第、SLAM等の実データを用いた性能検証を視野に入れて研究を進める予定である。 当該年度での他の研究者との議論から新たに加わった論点として、神経生理学の観点からの定数時間フィルタの高い有用性がある。神経生理学では脳の神経系をガウスフィルタやガボールフィルタによってモデル化するが、このシミュレーションの際に定数時間フィルタが非常に有用であることがわかった。したがって、神経生理学で広く用いられる運動エネルギーモデル・視差エネルギーモデル・時空間モデリングといったモデルに対するフィルタ処理の応用も視野に入れながら、処理速度と近似精度の両立を実現する高度なフィルタ計算法を確立したい。 上記の課題を検討する際に生じた問題については、信号処理・コンピュータビジョン分野の国内外の研究者との議論を通じて、早期に解決することを目指す。
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Research Products
(17 results)