2019 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of paradoxical phenomenon caused by presenting thermal stimulation on multiple spots
Project/Area Number |
18K18079
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
橋口 哲志 龍谷大学, 理工学部, 助教 (70710581)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 温度感覚 / 矛盾現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では温覚刺激と冷覚刺激を複数箇所に同時に提示した際に,温覚刺激を冷たい,冷覚刺激を温かいと知覚するような矛盾感覚が発生する現象に着目した.このような矛盾現象は提示温度と真逆の温度に感じてしまうため温冷覚提示の実用に向けて大きな問題となるが,さらにこの現象を分析することで効率的な温冷覚提示も実現できる可能性がある.そこで,矛盾現象がどのような条件で発生したかを系統的実験により分析することにした. 実験ではまず温冷覚刺激を前腕の3点で交互になるように提示し,実験参加者にそれぞれの提示箇所で温かいか冷たいか尋ねた.その結果,外側2点でも矛盾現象が発生することを確認した.したがって,温冷覚刺激が互いに影響し合うことで矛盾現象が発生したことを支持した.続いて,その他の温冷覚刺激の組み合わせでも矛盾現象が発生するのか確認を行った.その結果,3点で交互になるように提示するだけでなく,その他の刺激の組み合わせでも矛盾現象が発生することを確認した. 次に矛盾現象の発生にどのような要因を分析するめ,発生要因として刺激位置の間隔と刺激の温度に着目した.実験の結果,刺激の提示箇所や組み合わせによっては,刺激位置の間隔が狭くなるほど,矛盾現象が発生しやすくなることを確認した.また,刺激の温度に関しても,温冷覚刺激の温度の組み合わせによって,刺激の温度が矛盾現象の発生に影響を与えることを確認した.特に温覚刺激として44度を使用した場合,矛盾現象が発生しやすくなることがわかった. さらに,温冷覚刺激を提示する身体部位に着目して実験を行った.その結果,身体部位ごとの温度知覚の特性に違いが見られる結果は得られたものの,矛盾現象の発生傾向の分析には至らなかった.また,刺激の提示面積に着目した実験では,提示面積を変更した場合に,ある提示刺激の組み合わせにおいては,本現象の発生傾向が変わることを確認した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度より,矛盾現象の発生傾向を分析するため各種実験を行った.まず実験では温冷覚刺激を前腕の1点,2点および3点に提示した際に,それぞれの提示部でどのような温度感覚として知覚されるのかについて調べ,矛盾現象の発生傾向を確認した.これらの結果より,温冷覚刺激の提示数を増やすことで提示刺激と真逆の温度を知覚する現象の生起率が増加することがわかった.その温冷覚刺激の組み合わせの中でも前腕の3点で交互になるように提示したところ,矛盾現象の発生率が高く,中央だけでなく外側2点でも矛盾現象が発生することを確認した.このように温覚刺激と冷覚刺激が相互に影響することで,矛盾現象が発生する可能性が示唆された. 2019年度より,さらに矛盾現象の発生要因を分析するため,刺激位置の間隔と刺激の温度,また身体部位に着目した.刺激位置の間隔の実験では3点の刺激位置が等間隔である場合,温冷温「手首側」と冷温冷「肘側」では刺激位置の間隔が狭くなるにつれ,矛盾現象が発生しやすくなったことがわかった.また,刺激の温度に着目し実験では刺激の温度が矛盾現象の発生に影響を与えることを確認した.具体的には,温覚刺激と冷覚刺激が提示されていれば,様々な刺激の温度で矛盾現象が発生すること,温冷温,冷温冷のどちらの組み合わせにおいても,温覚刺激として強い温度刺激の44度を提示すると,矛盾現象が発生しやすくなることがわかった.次に身体部位での実験では,これまで対象としていた前腕とふくらはぎ,背中とで,矛盾現象の発生傾向に違いが表れるかを確認した.結果として,右前腕に加えふくらはぎでも,本現象の発生を確認した.しかし,背中に関しては,温度知覚が安定しないことや3箇所の提示が感覚で分かりづらいといったコメントから,矛盾現象の発生傾向の分析をするには難しい結果となった.よって身体部位に関してはさらに実験が必要となる.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験を踏まえて,今後も矛盾現象の発生要因を分析していく.特に身体部位に関しては提示部位によっては装置が大きく提示できない部位があった.そこで,前年度に小型のペルチェ素子を個別に制御することで装着型でも使用可能な温冷覚提示装置のプロトタイプを作成している.この小型温冷覚提示装置を用いることで提示面積が狭く,今まで分析できなかった手指においても分析が可能となる.特に手指では物体に触れる機会が多く,ここでも矛盾現象が発生するのであれば,この現象を活用した温度提示方法が提案できる.例えば,指先に矛盾現象が発生しやすい条件が判明すれば,接触している物体の温度を真逆に知覚させることが可能になる.つまり,接触物体の温度が変更することが難しいものでも,間接的に温度を真逆に知覚させ,全く異なる触印象を与えることが可能になる.そこで,今後は手指における矛盾現象の発生を確認していき,この現象の応用性についても検証していく.
|
Causes of Carryover |
本研究では温冷覚刺激を複数ヶ所に組み合わせて提示した場合,温覚刺激を冷たい,冷覚刺激を温かいと真逆に誤認してしまう現象を対象に分析を行っている.現状,計画通り前腕で温度や刺激間距離の組み合わせをパラメータとして実験を行ったが,予想に反して本現象の発生率が高かった.それ故に前腕以外の部位でも本現象が確認される可能性が高く,さらに深く分析することが必要となった.よって,特に手指のような面積の狭い領域に温度提示が可能な小型の温度提示装置を作成する費用にする.前年度ではプロトタイプを作成したが,実験用装置を作成して本実験を実施する.またこれらの成果を発表するために旅費としても使用する予定である.
|
Research Products
(3 results)