2018 Fiscal Year Research-status Report
足裏への温度提示による無意識の立位調節機序の解明とリハビリテーションへの応用
Project/Area Number |
18K18091
|
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
渡辺 亮 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 特任研究員 (30808861)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 設計 / 論文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまでの研究で,無意識的な運動調節に温痛覚が寄与することを示唆した.本研究はこれを立位姿勢の制御へ応用し,簡便で負担の少ないリハビリテーションが実施されることを目的とする.重心制御を行うにあたり,温度刺激を足裏に提示する手法を採用している.これまで使用してきた装置は,バランスWiiボード(任天堂)上部にペルチェ素子を用いた自作の温度刺激装置を取り付け,足裏への温度刺激と重心の計測を同時に行なってきた.装置の最上部,足裏が接触する温度提示面にはペルチェ素子を敷き詰め,その下部には冷却用の放熱板とファンを配置する.ペルチェ素子は印加する電流量の制御により加熱・冷却が可能な電子素子であり,温度を提示する素子としては一般的なものである.ペルチェ素子の提示温度はマイコン制御され,高速に変化することが可能である.配置された各ペルチェ素子はそれぞれ異なる温度を提示することが可能である.初年度までこの試作装置を用いた予備実験を続け,刺激提示と重心計測の両者について限界が見えてきた.試作段階での実験結果を生かし,より精密な刺激提示・計測が可能な装置を設計しており,次年度でこれを作成し実験に用いる.また温痛覚と運動調節の関係についてこれまで行ってきた研究のうち,指先に提示される温度と把持力の関係について行った研究につき論文化を執筆中であり,これは今後Current Biology誌への投稿を予定している.広範囲への温度刺激提示手法に密接に関わる錯覚現象Thermal Referral についての実験結果もまとめており,感性工学会論文誌へ投稿の予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請は温痛覚と運動制御の関係性を解明し,これを応用した立位リハビリテーション手法の礎を築くものである.申請者はこれまでの研究で無意識に出力された運動が,温痛覚の生起を知る手がかりとなるのみならず,一方で温痛覚・運動制御間の関係は,提示する温度パタンによって誘発される人間の運動を制御できることも示している.温度刺激の提示場所として,人間の立位姿勢制御に大きく関わり,全体重を支える足裏を選択した.足裏に温度を提示する装置を試作・予備実験を行い,その結果をもとにより正確な提示・計測が可能な装置を設計した.本研究の基幹となる温度―運動調節についての研究,関連する温度錯覚現象についての研究結果も論文化を進めている.次年度では初年度の設計をもとに実験を行う.
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度に行った設計に基づき,実験装置を作成する.初年度に購入した重心動揺計と電子部品を用いて自作の温度提示装置を増設する.その構造はこれまでのものと基本的に同じであり,ペルチェ素子と放熱板を用い,マイコン制御によって提示温度を調整するものである.足裏に提示する温度パタンを変化した際の姿勢変化を検証するとともに,被験者の脚部に装着した筋電位計から,姿勢変化時の筋活動を検証する.温度提示による姿勢調節のメカニズム解明にあたり,姿勢変化に伴い身体のどの筋肉が使用されるのかは重要な手掛かりとなる..温度―筋活動間の関係が明らかとなれば,効率的な機能回復のために特定の筋を重点的に活動させるということも可能となる.これらの実験は,まず姿勢調節機能に問題のない被験者に行い,その後機能に問題をもつ被験者へ適用し,リハビリテーションの効果を検証する.
|