2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K18104
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村脇 有吾 京都大学, 情報学研究科, 助教 (70616606)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ベイズ統計学 / 言語類型論 / 言語系統樹 / 言語接触 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究代表者のこれまでの研究を発展させることで、世界の諸言語が、数百年、数千年の規模でどのように変化してきたかの解明に取り組んでいる。言語は複雑な系であり、様々な側面を持つが、本研究では、主語・目的語・動詞(SOV) の基本語順や、声調の有無といった構造的特徴の変化を中心に扱う。人手による論証という歴史比較言語学のこれまでの取り組みでは不確実性の扱いに限界があった。そこで、本研究では主にベイズ統計を用いた計算集約的手法により、不確実性を考慮しながら言語の特徴の定量的性質を明らかにする。 初年度である今年度は、構造的特徴からの潜在表現の導出と、それを利用した通時的変化の推論に取り組んだ。言語の構造的特徴を統計的にモデル化する従来手法は各特徴の独立性を仮定していたが、Greenbergによる含意的普遍性の発見以来、特徴間には複雑な依存関係があることが知られている。そこで、まず表層特徴列から潜在変数列を導出する統計的手法を開発した。潜在変数には独立性を仮定しており、表層特徴よりも独立性を仮定した操作にともなうリスクが低いことが期待される。その上で、潜在変数列を言語系統樹と組み合わせ、通時的変化の推論を行った。具体的には連続時間マルコフ連鎖モデルを用い、各潜在変数の時間の経過にともなう確率的変化をモデル化した。この結果、例えば同じSVO語順の言語であっても、他の特徴の状態によって語順の安定性に大きな違いがあることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度であり当初計画の範囲で進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
言語の構造的特徴を対象としたモデル化については目処が付いたと考えている。今後はこのモデルを用いて具体的な言語現象の発見や説明を進めたい。 初年度に開発した統計モデルは、一見まったくことなる対象にも、わずかな修正のみで適用できることを発見した。すなわち、初年度の対象は全世界の言語、特徴は構造的特徴、目的は特徴間の依存関係を捉えることであったが、同じモデルが、ある言語の諸方言の語彙的特徴を対象として、それらの分布の空間的パターンを導出することにも利用できる見通しを得た。今後はこの可能性を検討したい。
|
Causes of Carryover |
少額のため。物品費、旅費、その他のいずれかに組み込み使用する。
|