2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K18122
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山岸 昌夫 東京工業大学, 工学院, 助教 (30638870)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 信号処理工学 / 最適化工学 / 非凸正則化 / 反復解法 |
Outline of Annual Research Achievements |
凸最適化に基づく信号処理手法は,信号処理に現れる諸問題を凸最適化問題として定式化し,その解法を信号処理アルゴリズムとして活用する手法である.この手法は,推定対象の「観測情報」と「先験情報」を同時に活用する柔軟な枠組みとして,スパース信号処理やデータサイエンスなどの発展において中心的な役割を果たしている.この手法のさらなる発展には「新たな最適化問題」に対するアルゴリズムを確立することが最重要課題となっている.本研究は,この課題に現れる種々の困難を最適化理論と実代数幾何のアプローチを用いて解決し,信号処理工学の学術的発展に資することを目的としている.
今年度の主な成果として,近似同時対角化問題に対するアルゴリズムを提案している.近似同時対角化問題は,与えられた複数の正方行列に対して,それらを同時に対角行列に近づける「共通の相似変換行列」を見つける問題であり,与えられた複数の正方行列が持つ共通の特徴を抽出する手法として活用されている.提案アルゴリズムの設計では,これまで活用できていなかった線形代数的知見を用いて,近似同時対角化問題と「巨大行列に関する巧妙に設計された実行可能問題(ある部分空間と低ランク行列集合との共通部分に属する行列を見つける問題)」との間の非自明な関係を明らかにしている.この関係を用いて,実行可能問題に対する反復解法を活用した近似同時対角化アルゴリズムを提案している.また,提案アルゴリズムが,既存の近似同時対角化アルゴリズムを上回る性能を達成することを数値実験を通して確認している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画において予定していた結果が得られていないという観点では,やや遅れていると考えている.一方で,当初想定していなかった結果が得られており,その意味では,おおむね順調であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年に得られた成果である「ベクトルのスパース性や行列の低ランク性などの促進に有効な非凸正則化」を様々な応用問題に適用し,その効果を確認する.
また,実行可能問題に対する平均射影法の収束解析を拡張する.実行可能問題は,複数の制約集合が与えられたとき,その共通部分に属する点を一つ求める問題である.平均射影法の一反復は,現時点での候補解から各制約集合に対する距離射影を算出し,それらの平均を更新先に採用するというものである.実代数的集合の実行可能問題に対しては,平均射影法の収束解析が提案されている.この結果の拡張し,より広いクラスの集合に関する実行可能問題に対して,平均射影法の収束解析を行う.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイスの影響により,出張旅費の支出を大きく延期する必要があった.今年度も,不透明な状況が続いているが,国際会議発表や海外研究者との対面での議論を実施するために使用したい.また,昨年度も理論研究が中心となったため,大規模シミュレーションに必要な計算機の購入を見送った.今年度中の計算機の購入に使用する予定である.
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