2018 Fiscal Year Research-status Report
情報処理過程のモデル化に基づく調性知覚の神経基盤の解明
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18K18139
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
森本 智志 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 訪問研究員 (90794230)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 音楽知覚 / 音楽的期待 / 和音 / 計算モデル / 脳波 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は音楽刺激聴取時に調性知覚をもたらす神経基盤を計算論的な立場から明らかにし、その情報処理が音楽刺激以外の時系列刺激に対する知覚においても共通して用いられているという仮説の検証を目的としている。 当初は初年度に、(1)情報処理モデルの推定と評価を従来研究よりも効率的に行うための実験パラダイムの設計と、(2)予備的な脳波計測実験を中心に取り組む計画であった。 (1)については、適切なモデルパラメータ推定が可能となる刺激パターンの組み合わせの検討を行った。先行研究では、2連鎖条件として12種類全ての長和音の組み合わせ(144通り)を呈示する実験を行い、音高による音楽的期待への影響がないことを確認する結果を得ていたが、モデルパラメータの推定に関してこの実験条件のデータを除外しても影響がないことを確認した。一方、4連鎖以上の刺激では音程の組み合わせだけでも膨大な数となり現実的ではない。そこでランダムに抽出した音程を用いて実験した場合にパラメータの推定とモデルの評価が可能になる最適な実験デザインを検討し、デザイン案を得た。 (2)に関しては、年度内の実施目途が立たなくなったため、次年度以降に延期することとした。 代わりに元々2年次以降の予定としていた(3)視覚の時系列呈示実験の準備に取り組んだ。特に、教師なし学習に基づく刺激の特徴量のラベリングが、自然な連続映像を用いるプライミング実験でも計算論的評価を可能にする有効な手段なのではないか、というアイデアについて先行して検討を進め、およその分析フレームワークを確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度頭に異動になったため、研究環境の整備に多くの時間を割かざるを得なくなった。さらに機材使用や異動先所属機関での倫理審査申請等のスケジュールの兼ね合いから、本研究の主軸となる(2)の脳波計測が遅れを取ることが確実になったため、当初2年次以降に計画していた(3)の視覚刺激を用いた実験の刺激作成・解析手法の開発に主眼を置いて進めることとした。 いずれも進捗として得られている結果自体は良好であり、特に(3)については当初研究計画の立案時には困難と考えていた(自然な)映像刺激を用いたプライミング実験でも解析が可能となるアイデアがまとまり、実現性が見えてきた。 しかし全体としては目標としていた年度内の学会発表にはシミュレーション実験を含めまとめきれなかったため、自己評価は((3)やや遅れている。)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の骨格となる刺激作成、解析手法がおよそまとまったため、2019年度は実験を中心に取り組んでいく。 連鎖和音を用いる実験と視覚的文脈刺激を用いる脳波計測実験を並行して進める。同一の実験参加者からデータを取得することで、直接的な比較を可能とすることを検討している。2019年度内に国内学会にて結果発表することを予定している他、計画段階の実験パラダイムについても議論が可能な小規模な研究会等に参加してブラッシュアップする機会を設けていく。 また当初の計画には含んでいなかったが、教師なし学習に基づく刺激の特徴量のラベリングが計算論的分析に役立つだけでなく、より一般的な脳活動の時系列解析にも有用だと考えており発展的課題として検討を続けていく。
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Causes of Carryover |
異動の関係で2018年度内の行動実験及び脳波計測予備実験の準備が整わず、シミュレーションなど計算機上で可能な作業を中心とするようにスケジュールを変更した。2019年度から2020年度にかけて、当初予定していた脳波計測の本実験も含めて実施していく。 また解析用ワークステーションが当初の見積もりよりも安く購入でき、余剰金が生じた。実験環境上、いくつかの音響機材等を追加で購入する必要が出てくると予想され、余剰金はその整備に使用する。
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