2018 Fiscal Year Research-status Report
前脳固有の形態形成に必須な方向依存的細胞集団運動を力学制御するシグナル経路の解明
Project/Area Number |
18K18155
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大塚 大輔 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (40632865)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 器官形態形成 / 細胞集団運動 / モルフォゲン / 力学応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
器官固有の形態は方向依存的な組織変形により実現される。ニワトリ前脳固有の形態は方向性を持った細胞集団の再配列による組織の異方的な伸長により実現されていることが明らかとなった。では「何が細胞に方向情報を与え、その運動はどのように制御されているのだろうか?」。これらを明らかにすることが本研究の目的である。 本年度はモルフォゲンであるSHHと器官形状に由来する組織内応力が細胞集団運動の方向性決定に関与しているのではないかとの作業仮説をたて、研究を行った。まず、上皮の形態形成機構に関与することが報告されているリン酸化ミオシンの局在パタンとSHHシグナルの関係性について調査した。 その結果、正常時の前脳腹側組織においては組織の伸長方向と垂直にリン酸化ミオシンが配向すること、一方、SHHシグナル阻害条件ではこのようなリン酸化ミオシンの配向性が消失することが明らかとなった。次に、組織内応力に関してはレーザーアブレーション実験及び有限要素法を用いた力学シミュレーションにより前脳組織全体において前後軸方向に異方的な組織応力が存在することが明らかとなった。次に、SHHシグナルと組織応力の関係性を実験的に証明するために、前脳組織を切り出し、任意の方向に外力を付加できる実験系を構築した。これらの系を用いて、前脳組織に力学刺激をあたえると、器官形状から予想される組織内応力方向に伸展をした際に、通常の胚発生でみられるリン酸化ミオシンの配向性および細胞集団運動が確認された。一方、SHHシグナル阻害条件下ではそのようなリン酸化ミオシンの配向性および細胞集団運動は認められなかった。これらのことから、器官形状に由来する組織内応力が方向情報を生み出し、SHHは力学刺激に対する応答能 (リン酸化ミオシンの方向性を持った局在および細胞集団運動の方向性) を細胞に付与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り研究が行われている。今年度は前脳形態形成に関与することが知られていたモルフォゲンであるSHHに焦点を絞って解析を行った。その結果、SHHシグナルは細胞に力学刺激に対する応答能を与えることで方向性を持った細胞集団運動を駆動していることが明らかとなった。形態形成機構を理解する上では力学シグナルがどのように関わっているのかを明らかにすることは必須である。そのため、今年度に構築した実験系 (組織に任意の力学刺激を付与できるもの) は、今後の研究を進める上でも重要なものとなりうると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り研究を進める。今年度の結果から、SHHシグナルは前脳形態形成過程のミオシン依存的なフェーズに関与することが明らかとなった。来年度は前脳形態形成過程に関与することが示唆されているモルフォゲンであるFGF8がミオシン非依存的な方向性を持った細胞集団運動にどのように関与するのかを、細胞動態、分子動態の定量計測を通じた解析から明らかにする予定である。
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