2018 Fiscal Year Research-status Report
仮想通貨Bitcoinにおける取引履歴の解析による使用目的の識別と関連性の解明
Project/Area Number |
18K18162
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
豊田 健太郎 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (60723476)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ブロックチェーン / フォレンジクス / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
Bitcoinは,Bitcoinアドレスと呼ばれる個人と一切紐付けのない``口座''間で送金が可能な匿名性のある仮想通貨として普及している.しばしばこの匿名性は,マネーロンダリング,違法商品を扱うマーケットプレイスでの決済手段,高利息投資ブログラムと呼ばれる投資詐欺などに悪用されている.そこで犯罪フォレンジクスの観点からBitcoinの取引履歴を解析する手法について取り組んだ.まず高利息投資ブログラム,および違法商品を扱うマーケットプレイス運営者が管理するBitcoinアドレスを収集し,それらの取引履歴の特徴を抽出し,教師あり機械学習にて学習・識別を行い,識別精度を評価した.その結果,高利息投資ブログラムの識別に関しては,偽陽性率を5%程度に抑えつつ,約95%の識別精度が得られることがわかった.さらに,マネーロンダリング,ギャンブル,高利息投資ブログラムなどの計7種のクラスに対して多クラス識別を行い,約73%の正答率で識別できることがわかった.また既存手法は静的な解析がほとんどであり,動的,すなわち時系列解析の手法は例が見られない.そこでBitcoinアドレスの取引履歴に対して時系列解析ならびに異常検知を行う手法を提案した.提案方式の有効性を示すため,2013年に米国SEC (Security and Exchange Commission)に告発されたPirate@40の投資詐欺に対し提案手法を適用し,取引から算出された異常スコアが実際に起きたイベント時に高くなる傾向があるかを明らかにした.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の初年度の目標は,(i) Webサイトからサービス・犯罪に用いられているBitcoinアドレスの収集,(ii) 得られた各サービス・犯罪のBitcoinアドレスに対し,取引の特徴抽出, (iii) 特定のクラスに限定した二値識別を目標としていたが,実際には上記の目標に加え,取引の時系列解析に関する研究に着手し,有効な結果が得られたため.
|
Strategy for Future Research Activity |
各サービス・犯罪間にどのような関係があるのかを解明するために,どのようなサービス間でBitcoinの送受が行われているかを調査する.具体的には,収集した一連の取引履歴から送金/受領の関係にあるBitcoinアドレスを抽出し,これらの関係のあるBitcoinアドレスからソーシャルグラフを構成する.これにより,例えばHYIPで不正に収集したBitcoinがその後ギャンブルやマーケットプレイスでの決済に用いられる傾向がある,などといったサービス・犯罪間の関係性・類似性を解明する.さらに,ホモフィリーと呼ばれる,属性・傾向の似た者同士がソーシャルネットワーク上でより近接した関係にあるという性質が,Bitcoinのアドレス間においても見られるのかを明らかにする.例えばHYIPの運営者のBitcoinアドレス同士はグラフ上で近くに存在するのかといったことや,どの使用目的がHYIPと近接しているかといった性質を解明する.
|
Causes of Carryover |
初年度の研究成果のうち2件を国際論文誌IEEE Accessに投稿中であり,これらの掲載料を考慮に入れている.さらに,現在執筆中の国際会議原稿に関して,採択された場合の旅費ならびに学会参加費が必要となる.また次年度取り組む予定のグラフ解析に関しては,より大規模かつ高速に処理可能なワークステーションを購入予定である.
|