2019 Fiscal Year Research-status Report
現地観測と衛星観測の統合解析による東南極氷床の動態把握と変動メカニズムの解明
Project/Area Number |
18K18176
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
津滝 俊 国立極地研究所, 研究教育系, 特任研究員 (40706371)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 表面質量収支 / 東南極ドローニングモードランド地域 / 南極氷床 |
Outline of Annual Research Achievements |
氷床沿岸部からドームふじ基地に至る約1000kmの輸送ルート沿いの約500点において取得された、1991-2019年の表面質量収支データの解析を進め、以下3点の知見を得た。(1)沿岸から内陸250km地点のみずほ基地付近までは、高度の増加とともに涵養量は減少した。(2)みずほ基地より内陸では、涵養量は一度増加し、大きな年々変動を伴いながら減少した。また内陸250-600kmの領域では、氷床表面が比較的緩やかな地域では涵養量が多く、傾斜の大きい地域では涵養量小さくなる空間分布が示された。(3)内陸600-1000kmの領域では、涵養量は次第に減少し、年々変動も比較的小さい。また1991- 2019年の時間変動を解析した結果、2009年及び2011年は、他観測年と比較して涵養量が大きい。当該観測領域を含む東南極ドローニングモードランドでは、総観規模擾乱に起因する北方からの水蒸気輸送イベントが両年にわたって5度発生し、多量の降雪があった。本研究では現場観測データから同イベントの発生を確認しており、当該領域における近年の質量収支変動メカニズムの解明に関する新たな知見を得た。 雪上車に設置した高精度GNSSを用いて、精密な氷床表面高度測量を実施した。氷床沿岸部からドームふじ基地に至る約1000kmの往復路、およびドームふじ基地南方領域(総面積約1500平方km)において、総距離3200kmに及ぶ表面高度データを得た。また、2012-2013年に同手法を用いて、同領域で取得された氷床表面高度データを合わせて処理・解析し、複数年にわたる氷床表面高度データセットを整備した。 上記GNSS測量の時期と重なる、2010年代に衛星高度計により観測された氷床表面高度の数値標高モデル(DEM)データを取得した。衛星高度計DEMとGNSS測量による氷床表面高度を同座標点で比較した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和元年度は当初の計画のうち、涵養量の経年変動解析、人工衛星観測及び現地GNSS測量による氷床表面高度データの整備と高度の比較を実施した。涵養量の経年変動を、重力衛星及び領域気候モデルによって示された当該地域における近年の涵養量増加と比較し、そのメカニズムの考察を進めた。一方で全球気候モデル計算及び再解析データの準備は遅れている。以上の状況から、本研究は当初の計画からやや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は成果を論文へまとめることに注力する。当該観測領域における表面質量収支の過去30年スケールの時空間変動とそのメカニズムを、現地観測による表面質量収支データ、再解析データを用いて考察し、成果をまとめて査読付国際誌への投稿を目指す。またGNSS測量で取得した、複数年の氷床表面高度データセットをデータ論文としてまとめる。
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