2018 Fiscal Year Research-status Report
Assessment of beryllium-10 in offshore sediments for reconstructing environmental change in East Africa
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18K18178
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山根 雅子 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 研究機関研究員 (30785928)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ベリリウム10 / 海洋堆積物 / 陸域環境変動 / 集積メカニズム / 鮮新世 / 更新世 / 東アフリカ / 国際深海科学掘削計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、南大洋および東アフリカ沖の複数の地点で掘削された国際深海科学掘削計画(IODP)コアのベリリウム10分析を行い、陸域環境変動の指標としてベリリウム10が有効であるか詳細な検討を行い、東アフリカでの人類誕生以降(過去300万年間)の連続的な環境変動復元を目指している。 2018年度は、①当該堆積物コアの古環境アーカイブとしての妥当性の検証、②先行研究のレビューによる、海洋堆積物へのベリリウム10集積メカニズムの検討、及び陸域環境変動の指標としてのベリリウム10の有効性の検証、③当該堆積物コアのベリリウム10分析のための前処理を実施した。 当該堆積物コアの古環境アーカイブとしての妥当性の検証には、堆積物に含まれる浮遊性有孔虫の炭素14年代分析とIODP航海期間中に船上で行われた各種分析の結果を用いた。その結果、当該コアは連続的な古環境アーカイブとして使用可能だが、一部のコアは年代モデルや分析の時間分解能を再検討する必要があることが分かった。本研究成果は、2018年7月に開催されたIODP第361次航海ポストクルーズ会議にて発表された。 また、海洋、湖沼及び河川の各堆積物に含まれるベリリウム10について論じている先行研究のレビューを行い、海洋堆積物へのベリリウム10集積メカニズムの検討、及び陸域環境変動の指標としてのベリリウム10の有効性の検証を実施した。堆積物の採取地点の堆積環境がベリリウム10の集積メカニズムに大きく影響するため、堆積物の岩相や堆積構造などから堆積環境を検討することが重要であると示唆された。本研究成果は、2018年12月に開催された第21回AMSシンポジウムにて発表された。 以上の研究を踏まえて、堆積物コアのベリリウム10分析の前処理を名古屋大学宇宙地球環境研究所にて実施した。しかし、加速器質量分析装置の故障により、ベリリウム10分析の実施には至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、2018年度中に試料の処理と測定を集中して行う計画であった。しかし、①一部の堆積物コアの年代モデルや分析の時間分解能の再検討を実施したこと、②ベリリウム10分析を行う予定であった東京大学総合研究博物館の5UDタンデム型加速器質量分析装置が故障したこと、③試料の処理を集中して行う必要がなくなり、パートタイム技術補佐員を雇用しなかったことにより、研究の進捗状況は計画よりやや遅れている。 ベリリウム10分析の前処理の完了は目途がついており、タンデム型加速器質量分析装置の修理も2018年度末には完了しているため、本研究課題の最終年度である2019年度末には当初の研究目的の達成は十分に可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の進捗状況はやや遅れてはいるものの、2019年度も大枠では当初の研究計画のとおり進める方針である。 使用する堆積物コアの詳細な検討により、一部の堆積物コアに関しては、計画段階よりも低い時間分解能での分析を行うことになった。しかし、この低い時間分解能でも、鮮新世から更新世に至る長期傾向の検出は十分可能であり、研究目的の達成には影響を及ぼさない。 また、東京大学総合研究博物館のタンデム型加速器質量分析装置の修理は2018年度中に完了しているが、更なる不測の事態が発生した場合は、他の加速器質量分析施設でのベリリウム10分析の実施を検討している。
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Causes of Carryover |
2018年度中に試料の処理と測定を行う計画であったため、試料処理を行うパートタイム技術補佐員2名の人件費と、東京大学総合研究博物館の加速器質量分析装置の利用負担金を2018年度に計上していた。しかし、加速器質量分析装置の故障によって分析まで至らなかったこと、並びに、パートタイム技術補佐員を雇用しなかったことにより次年度使用額が生じた。 2019年度は、東京大学総合研究博物館の加速器質量分析装置の利用負担金、及びベリリウム10分析のための出張旅費を計上している。また、本研究成果を発表するために参加する国内学会及び国際学会への参加旅費、並びに、研究成果を国際誌に投稿するための英文校閲費・投稿費を計上している。
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