2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of a novel method for determination of branching ratios between reaction paths in HOx cycle by selective detection of HOx radicals
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18K18179
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河野 七瀬 京都大学, 地球環境学堂, 特定研究員 (40736766)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | HOxサイクル / OHラジカル / HO2ラジカル / RO2ラジカル / 大気化学 / 化学反応 / 反応経路分岐比 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在,大気化学で最も重要な連鎖反応の一つであるHOxサイクルを対象に,大気中で起こり得る化学反応の定性的かつ定量的な評価を目指し,HOx(OH, HO2, RO2)ラジカルの反応経路分岐比や反応収率の決定手法開発を目的とし,実験を行っている。特に,本研究では,重水素置換したODラジカルをHOxサイクルの開始剤として使用することで,各HOxラジカルの選択的な挙動観測を目指す。さらに,OHラジカルと揮発性有機化合物(VOC)の反応で生成する莫大な種類のRO2ラジカルを包括的に観測することで,HOxサイクルに関与する数多くのVOCを同定することなく,各HOxラジカルの経路分岐比および反応収率を決定することを試みている。OHラジカルは反応セル中でO3光解離に引き続く水との化学反応で生成し,A-X遷移に基づくレーザー誘起蛍光(LIF)法で検出を行う。HO2ラジカルおよびRO2ラジカルは,それぞれNOおよびO2との化学反応によってOHラジカルに変換し,OHラジカルとして検出を行う。OHラジカルへの再変換および検出は低圧の検出セルで行う。準備段階では,OHラジカルの検出および時間変化の観測に成功し,実験装置の組み立て等を行っていた。さらに,OH+CO反応,OH+C3H6反応で生成するHO2ラジカルおよびRO2ラジカルを化学反応によりOHラジカルに変換し,それぞれのラジカルの挙動を観測することにも成功していた。2018年度は,さらに,よりシンプルな構造をもつエタンや,大気中に放出されるVOCの中でも特に重要なVOCのひとつであるイソプレンとの反応で生成するRO2ラジカルの検出にも成功し,RO2検出のための実験装置や実験条件の最適化を行った。さらに,O3の光解離で生成したO原子とD2Oとの反応で生成するODラジカルの検出にも成功し,OHラジカルとの検出感度比較等を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,最終目標として実大気中の微小な化学種との化学反応の観測を目指すため,高い検出感度が必要である。そのため,2018年度にはLIFの検出感度を上げるために,検出セル中のサンプルガスを吸引するオイルロータリーポンプを現有のメカニカルブースターポンプに交換し,圧力を1Torr以上下げることに成功した。これにより,電子励起OHラジカルの窒素分子等によるクエンチングが減少し,LIF強度が増加した。さらに,LIFを検出する光電子増倍管や周辺装置の最適化を行うことで4倍ほど検出効率を増加させることに成功した。また,HO2およびRO2ラジカルの検出効率を上げるため,反応セルと検出セルをつなぐ管を10センチほど長くした。これにより,NOやO2との反応時間が長くなり,OHへの変換効率を上げることができる。これらの結果から,当初の予定よりも高い検出効率を達成することが出来た。さらに,高い検出効率により,OHラジカルとエタンやイソプレンの反応で生成したRO2ラジカルの定量的な観測が可能となった。さらに,ODラジカルの検出にも成功しており,研究課題の進捗は順調である。しかし,重水を使用した実験でもキャリアーガス等に含まれる水からOHラジカルが発生するという問題が発生した。さらに,HOxサイクルの複雑な反応メカニズムのため,より定量的に評価するためのいくつかの課題も出てきているため,進行具合をおおむね良好と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,バックグランドのOHラジカルのLIF強度を差し引くためのキャリブレーションを行う。そして,定常的に水が存在した場合でも,定量的な反応経路分岐比を決定する手法をラボ実験で確立する。さらに,大気中のVOCの中には,HOxサイクルの開始剤を重水素置換しただけでは選択的にRO2ラジカルの観測が難しいものが存在していることが判明したため,検出セル内に酸素ガスを添加し,RO2ラジカルのOH変換効率の酸素濃度依存性から,RO2ラジカルの相対的な濃度を算出する工夫を用いる。そして,2020年度には確立した反応経路分岐比決定手法を用いて実大気観測を行う予定である。
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Research Products
(3 results)