2019 Fiscal Year Research-status Report
春季親潮珪藻ブルーム期の海洋表面マイクロ層における蓄積物質とその濃度の把握
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18K18182
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
野坂 裕一 東海大学, 生物学部, 助教 (40803408)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 海洋表面マイクロ層 / 親潮域 / 植物プランクトン / 糖類 / 脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、親潮域の植物プランクトンブルーム発生時に海洋表面に蓄積すると考えられている糖類と脂質の濃度やその支配要因を明らかにすることを目的としている。そのため、平成30年度に引き続き、令和元年においても親潮域の春季植物プランクトンブルーム発生時期である5月において、調査航海(国際水産資源研究所、俊鷹丸 SY-19-05)航海に参加し、現場での調査を行った。令和元年の調査航海では、これまでの調査に加えて、平成30年度に実施できなかった海洋表面マイクロ層と表層水における脂質濃度の調査も行った。 これまでの結果から、植物プランクトン現存量の指標であるクロロフィル-a 濃度と糖類濃度は、バケツ採水で得られた表層水(水深約20 cmまでの表面海水)よりも海洋表面マイクロ水(水深約0.2 mmまでの表面海水)において高い傾向がみられた。平成30年度の結果では、植物プランクトンブルーム発生時には植物プランクトン由来の糖類(透明細胞外重合体粒子、TEP)が海洋表面マイクロ層に蓄積しやすいと考えられたため、令和元年度にみられた海洋表面マイクロ層の比較的高いTEP濃度は植物プランクトン由来である可能性が考えられた。また、親潮域と黒潮域ではクロロフィル-a濃度と糖類濃度に違いがみられた。 海洋表面は大気ー海洋間の物質交換に重要な役割を果たすと考えられるが、植物プランクトンブルーム発生時には、海洋表面に植物プランクトン、糖類、脂質などが蓄積しやすくなるため、大気ー海洋間の物質交換速度を一部低下させている可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
親潮春季植物プランクトンブルーム期間中の航海に参加し、海洋表面マイクロ層の調査を2回実施できた。これらの調査で得られた結果は本海域では新規性が高く、重要な知見となり得る。一方、海洋表面マイクロ水の自動採水装置は令和元年に改良したものの、令和2年5月に参加予定であった調査航海が新型コロナウィルス(COVID-19)の影響で乗船できなかったため、現場試験ができていない。年度中に試験を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
調査航海でこれまでに得られた試料の分析とデータ解析を行う予定である。また、親潮春季植物プランクトンブルームにおいて優占する植物プランクトンを令和元年度の調査航海で採取したので、この単離培養株を用いて室内実験を行う予定である。室内培養実験では、糖類や脂質の生産速度を明らかにしたいと考えている。
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