2019 Fiscal Year Research-status Report
放射線誘発組織障害の軽減に寄与する細胞外小胞の探索と被ばく医療への応用
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18K18190
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
山口 平 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (00782822)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 急性放射線症候群 / 放射線障害緩和 / TPO受容体作動薬 / 国内承認薬 / 緊急被ばく医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
血液や尿等の体液中には、感染性病原体や腫瘍に対する適応免疫応答の媒介や組織修復などの情報伝達を担う細胞外小胞の存在が相次いで報告され、バイオマーカーとしての活用が期待されている。放射線曝露においても、生体損傷への関与が示唆されているが、線量や産生・標的細胞の関係等未だその詳細は不明である。本研究では、こうした細胞外小胞の体内循環情報伝達物資としての性質を活用し、全身放射線曝露個体に組織障害軽減や致死回避をもたらす薬剤投与により 血中で増加する細胞外小胞を探索・特定し、それら細胞外小胞の放射線障害軽減作用を評価する事で今後の新たな放射線リスクの防護に資する事を目的としている。本年度は、マウスにX線照射後、放射線緩和剤としてTPO受容体作動薬を照射直後から腹腔内投与し、経時的に生存マウスを麻酔下で採血後、血液からcirculating RNAを回収し、マイクロアレイ解析及びPCRによる遺伝子定量解析を行い、放射線障害及びその障害軽減/致死回避応答に特異的な内在性分子の探索と同定を試みた。急性放射線症候群の無症状期にあたる4日目及び10日目では、白血病発症に関連すると報告があるmiR-296-5p、miR-486-5p、miR-328-3pが放射線照射で有意に増加した一方で、作動薬投与により有意な抑制が認められた。さらに、脾臓及び肺といった造血を司る臓器・組織では照射によるmiR-296-5pとmiR-486-5pの過剰発現がRPによって抑制されていた。特に肺におけるmiR-486-5pの発現が有意に高いことから肺が標的臓器であり、致死線量曝露個体に誘発される急性放射線症候群や薬剤による障害軽減情報を示すmiRNAである可能性が示唆された。高線量放射線ばく露個体へのRP投与は個体に高い生存率をもたらし、更に長期的な有害事象発生を抑制する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度計画していた通り、マウスにX線照射後、放射線緩和剤としてTPO受容体作動薬を照射直後から腹腔内投与し、経時的に生存マウスを麻酔下で採血後、血液からcirculating RNAを回収し、マイクロアレイ解析及びPCRによる遺伝子定量解析を行い、放射線障害及びその障害軽減/致死回避応答に特異的な内在性分子の探索と同定を試みた。また、脾臓及び肺といった造血を司る臓器・組織からRNAを回収し、特徴的に発現した遺伝子の発生起源の特定を試みた。現在、放射線緩和剤を投与したマウスの血液から回収した細胞外小胞を別の放射線曝露マウスから採取した造血細胞へ添加し、細胞外小胞がもたらす放射線緩和効果の検証と作用機序解明を目指し、細胞/個体致死回避への応用の可能性を探っているところであり、令和2年度も引き続き検討を行うため、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
放射線防護/緩和剤を投与したマウスの血液及び各臓器から回収した細胞外小胞を別の放射線曝露マウスから採取した造血幹細胞及び間葉系幹細胞へ添加し、細胞外小胞がもたらす放射線緩和効果の検証と作用機序解明を目指し、細胞/個体致死回避への応用の可能性を探る。
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