2020 Fiscal Year Research-status Report
Neurotoxicity assessment of environmental pollutants using differentiated dolphin nerve cells
Project/Area Number |
18K18201
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
落合 真理 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 特任助教 (70612662)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 人工多能性幹細胞 / iPS細胞 / 鯨類 / スナメリ / 線維芽細胞 / 神経毒性 / リスク評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、鯨類由来線維芽細胞から人工多能性幹細胞(iPS細胞)を樹立し、環境汚染物質のin vitro毒性評価系の構築を目的とする。初年度および次年度では、スナメリ(Neophocaena asiaeorientalis)の線維芽細胞に山中4因子を含む6種の初期化因子を導入し、スナメリ由来iPS様細胞を樹立した。得られた細胞は、アルカリフォスファターゼ、TRA-1-60、SSEA-3、SSEA-4抗体による染色で陽性を示し、PCR解析によりNANOG、SOX2、OCT3/4の発現が認められたため、未分化状態であることが示された。また、スナメリiPS様細胞を三胚葉へ分化した結果、3種マーカー(外胚葉:Otx2, 中胚葉:Brachyury, 内胚葉:SOX17)による染色で陽性であった。これらの結果から、スナメリiPS様細胞が分化多能性を獲得したことが示唆された。iPS様細胞を用いて胚様体を形成した後、神経前駆細胞を作成し、神経前駆細胞マーカー(Nestin, SOX2, OCT3/4)による染色で陽性が確認できた。
一方、初期化因子の導入に用いたプラズミドがスナメリiPS様細胞に残存していることがシーケンス解析により明らかになった。同様の問題が、鯨類と同じ鯨偶蹄目に属すブタでも指摘されている(Li et al., 2018, Cell Cycle, 17, 2547-2563)。これらの細胞も多能性幹細胞であると定義されているため、引き続きスナメリiPS様細胞を用いた神経細胞への分化試験を検討したい。
また本年度は、スナメリ線維芽細胞を用いて環境汚染物質による細胞毒性を解析した。その結果、スナメリの体内に残留する残留性有機汚染物質(POPs)と同等の濃度において、線維芽細胞に細胞死やアポトーシスが引き起こされることが明らからとなり、リスクの高い化合物を選定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は順調に遂行できており、これまで例のない鯨類由来iPS細胞の特性解析を進め、神経前駆細胞を作成することができた。初年度に得られた鯨類細胞と至適化した手法を用いて、次年度はスナメリiPS様細胞を樹立し、本年度は三胚様への分化多能性を確認した。また、胚様体の形成と神経前駆細胞への分化も確認できていることから、今年度の目標は概ね達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、スナメリiPS様細胞由来の神経前駆細胞を神経細胞へ分化誘導し、環境汚染物質への曝露による神経毒性評価を試みる。スナメリ体内への残留性が強く、リスクの高い化合物はすでに選定済みであるため、これらの化合物を用いて神経毒性を評価する。具体的には、細胞死やアポトーシスについて解析し、線維芽細胞の結果と比較する。さらに、蛍光顕微鏡を用いたハイコンテント解析により、樹状突起の伸長や分岐数等、神経細胞の形態変化について解析する予定である。また、プラズミドが残存しない鯨類iPS細胞を樹立するために、新たな細胞株の作成や樹立方法の検討に努めたい。
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Causes of Carryover |
予算を計画的に使用する予定であったが、急遽試料の輸送に伴う経費が発生し、差額が発生したため。
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