2021 Fiscal Year Annual Research Report
Visualization of water quality transition processes associated with natural disasters and anthropogenic impacts
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18K18202
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
利部 慎 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (20608872)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 島原湧水群 / 金峰山湧水群 / 水質データ / 年代推定 / 地下水汚染 |
Outline of Annual Research Achievements |
甚大な自然災害インパクト(1991年に発生した雲仙普賢岳の噴火)を受けた島原半島では上流域の土地利用形態が著しく変化し、下流域に広がる名水百選の『島原湧水群』への影響が考えられる。また、有明海を挟んだ対岸に位置する金峰山では、経年的な果樹園開発という人為起源インパクトに伴い、名水百選の『金峰山湧水群』の水質汚染が極めて進行している。両地域では、こうした自然災害と人為起源の大きなインパクトを受ける前(約25~30年前)の水質調査報告が存在していることから、当時と現在の湧水水質との比較に加え、高度な水文科学手法(同位体手法、水年齢手法等)を用いた水試料分析を適用し、環境負荷インパクト後の水質変化のメカニズムを可視化することを目的として実施した。 島原湧水群においては、噴火前後に行われた当時(高村ほか, 1999;島野, 1999)の水質データと比較すると、全20地点中7地点において水質に変化が見られたが、そのうち4地点では火砕流による埋没や深部地下水の混入など火山活動の影響が示唆された。また、建物用地の増加や農用地の減少、噴火に伴う荒地の増加といった土地利用形態の変化が確認され、汚染指標となる硝酸性窒素濃度の増減が見られたことから、水質変化との強い関連性が確認された。 金峰山湧水群においては、土地利用形態における果樹園の割合と硝酸性窒素との間に関係性がみられた。硝酸性窒素濃度と果樹園割合の経年変化から、1976 年から 1987 年にかけての両要素の増加傾向が一致した。しかし、その後の 2006 年から 2016 年にかけては、農用地面積の増加と硝酸性窒素濃度には必ずしも相関性を示すとは限らない結果を示した。その理由として、熊本市が2007 年に「熊本市硝酸性窒素削減計画」を策定し、施肥・家畜排泄物・生活排水の発生源対策を中心に推進した成果が徐々に顕在化してきたためと考えられる。
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