2019 Fiscal Year Research-status Report
PM2.5に寄与するバイオマス燃焼の種類を識別する指標の開発と発生源解析への応用
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18K18204
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
藤井 佑介 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 助教 (90780099)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | バイオマス燃焼 / もみ殻 / PM2.5 / OC / 排出係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、野外で実際にもみ殻を燃焼させた際に発生したPM2.5の試料捕集および化学分析を行った。また、室内実験として、バイオマス試料の温度制御可能なチャンバー実験系を用いて粒子生成実験を行った。その際、野外実験で用いたもみ殻 (未燃分) を使用した。
野外実験の結果から、もみ殻の燃焼時に発生するPM2.5に含まれる成分はほぼ有機成分であり、本成分の重要性を確認した。室内実験では、まず初めにもみ殻の試料温度を室温から100 ℃に上昇させた後、100 ℃から600 ℃まで一定の昇温速度 (実験条件: 2、5、10、15 ℃/min) で加熱し、その間、走査モビリティーパーティクルサイザーを用いた粒子径別の個数濃度を測定するとともに、発生粒子を石英繊維フィルタ上に捕集した。粒子捕集後のフィルタ試料の一部は化学分析に供した。昇温速度2 ℃/minと5 ℃/minの実験条件では、それぞれ240 ℃ と260 ℃付近に総個数濃度のピークをもつ一峰性の濃度分布が得られた。しかし、昇温速度10 ℃/minの実験条件では、260 ℃付近のピークに加え、その後も複数の総個数濃度のピークが認められた。15 ℃/minの実験条件でも10 ℃/minと同様の結果が得られたが、260 ℃以降の粒子発生量が10 ℃/minの場合と比べて顕著に増加した。本実験中に捕集したフィルタ試料に対して炭素分析を行い、有機炭素 (OC) 量を定量した。その結果、1 gのもみ殻が燃えた際に発生したOC量 [mgC/g-もみ殻] は、昇温速度が大きいほど排出係数が大きくなることを示した。
その他、大阪府の堺市とベトナムのホーチミン (新規に追加) における大気中PM2.5の観測体制を整え、PM2.5試料捕集 (堺市は2019年4月開始、ホーチミンは2019年9月開始)・一部試料の化学分析を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた室内での燃焼実験 (もみ殻を使用) だけでなく、実際に野外でもみ殻を燃焼させたときに発生したPM2.5の試料捕集・化学分析を行った。しかし、輸入禁止品である泥炭土壌の燃焼実験の所属研究機関での使用許可を得るのに時間を要したため、泥炭土壌の実験を本年度に行うことはできなかった (次年度からの実験許可は既に得ている)。
大阪府堺市の大気中PM2.5試料の捕集は計画通り一年間を通して実施できた。さらに、バイオマス燃焼の影響度が日本より大きいと考えられるベトナムのホーチミンでのPM2.5観測体制を新規に整え、PM2.5試料捕集を開始できた。
以上より、本プロジェクトは全体的にみて、おおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
検討が不十分なバイオマスの室内燃焼実験や熱分解GC/MS分析を行い、それらから発生した粒子の特性について考察する。その他、野外観測で得られたPM2.5フィルタ試料 (大阪、マレーシア、ベトナム) に対して各種化学分析を行う。その後、バイオマス燃焼のPM2.5に対する影響を評価するために、統計モデルによるPM2.5発生源解析を行う。
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Research Products
(9 results)