2018 Fiscal Year Research-status Report
森林土壌からの放射性セシウム溶脱におけるきのこと土壌細菌のシナジー効果解明
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18K18210
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
Guido Fabiola 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 博士研究員 (90805798)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 有機酸 / シデロフォア / きのこ |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌中の放射性セシウムは粘土鉱物に強力に結びついていて、植物等への移行は多くないと考えられている。しかし、きのこは放射性セシウムを効率的に吸収していることが知られている。その理由として研究者は、きのこが土壌等に分泌する有機酸をシデロフォア生産菌の栄養として利用される結果、シデロフォア生産量が増加し、シデロフォアと有機酸の相乗効果によって土壌からのセシウム溶脱が進むのではないかと考えた。その機構の解明を目標として、有機酸とシデロフォアが土壌からのセシウム溶脱に及ぼす検討を行った。今年度は、きのこが生産する有機酸を明らかにするため25種類のきのこを試験した。これらを液体培養し、その培地から抽出した有機酸をガスクロマトグラフィー質量分析器により定量した。その結果、十数種類の有機酸の存在を確認した。中でも、乳酸、プロピオン酸、コハク酸が、放射性セシウムを高効率で吸収するきのこで特異的に生産されていることを明らかにした。次に、これら有機酸が鉱物から放射性セシウムを溶脱させる能力があるかどうか試験した。数種類の鉱物に放射性セシウムを吸着させ、有機酸を含む溶液中で一定時間撹拌した。そして、溶液中に溶脱した放射性セシウムを定量した。その結果、これら有機酸の放射性セシウム溶脱能力はあまり高くないことを確認した。さらに、シデロフォアが土壌中の放射性セシウム溶脱にどの程度影響しているのか確認するため、模擬シデロフォアとして市販のdesferrioxamine B(DFO)を利用して試験した。鉱物に放射性セシウムを吸着させ、DFOを含む溶液中で一定時間撹拌した。そして、溶液中に溶脱した放射性セシウムを定量した。その結果、このシデロフォアは放射性セシウム溶脱能はあまり高くないことを確認した。さらに、土壌細菌のシデロフォア産生を確認する際に利用するCAS培地の使用条件を検討し、最適条件を設定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究スケジュールに記載してあるとおりの進捗状況であるため、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は土壌細菌を培養してシデロフォアを生産させる。産生したシデロフォアを定量・同定する。次に、きのこが生産した有機酸を土壌細菌の培地に添加し、シデロフォアの生産量にどの程度影響があるか確認する。さらに、産生したシデロフォアを利用して、土壌からの放射性セシウム溶脱試験を実施し、溶脱効率を明らかにする。一連の試験では、土壌細菌のシデロフォア産生に時間がかかる。また、大量のシデロフォアを確保するのも時間がかかる。そのため、研究グループで保有している恒温槽を最大限に利用して、サンプル数を多くして実験の進捗を図る。また、解析に時間がかかるときは、研究室のメンバーに協力してもらうことにしてあり、研究を推進していく。
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