2020 Fiscal Year Annual Research Report
Effect of humic substances on the cell-adsorptivity and bioavailability of Fe to brown macroalgae
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18K18212
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
岩井 久典 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 博士研究員 (70733765)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 褐藻 / 鉄 / 腐植物質 / 藻場再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本近海では磯焼けと呼ばれる藻場の減少消失が深刻化しており、沿岸生態系保全及び水産資源確保の観点から藻場の再生保全が求められている。ココンブ等の褐藻は、生殖生長に溶存鉄を必要とすることがわかっているが、摂取プロセスについては未だ不明な点が多い。褐藻は他の藻類と異なり、鉄吸着能を有するアルギン酸を主成分とする細胞壁を有する。本研究では、細胞壁透過性を加味した鉄の生物利用性を検討した。 褐藻の細胞壁を模倣し、アルギン酸薄膜でコーティングしたガラス濾紙を作成した。当該フィルターを用いて、溶存有機物及び溶存鉄の細胞壁透過性を評価した。50kDaまでの分子が透過できることが確認でき、フルボ酸で代表される環境中の溶存有機物のほとんどが細胞壁を透過できると考えられる。鉄の透過性を検討したところ、キレート剤がない場合、鉄の95%以上は当該フィルターを透過できなかった。一方、堆肥の海水可溶有機物を2-10mg/L添加した場合、透過性の鉄は可溶有機物の添加に伴い増加した。対象としてEDTAを用いた場合、約90%の鉄が当該フィルターを透過できることがわかった。 また、鉄の透過性と生物利用性を、褐藻の生殖アッセイにより検討したところ、透過性の鉄濃度と生殖度合いに良い相関が確認できた。 実沿岸域(北海道日本海側)において、透過性の鉄及び付近に生えている褐藻胞子体中の色素を調査した。褐藻の比較的生えているエリアでは、そうでないエリアに比べて全溶存鉄の濃度が低いにもかかわらず透過性の鉄濃度は若干高い値となっていた。また、褐藻胞子体中のクロロフィルa濃度と沿岸海水中の透過性鉄濃度にも相関が見られた。 これらの結果は、鉄の透過性が溶存鉄の生物利用性を検討する上で重要な指標となることを示している。
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Research Products
(2 results)