2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of Novel Environmental Catalysts with Excellent Oxidation Activity for Air Pollutants
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18K18215
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Research Institution | Kobe City College of Technology |
Principal Investigator |
安田 佳祐 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50707932)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 環境触媒 / 完全燃焼 / 酢酸エチル / セリウム / マンガン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大気汚染物質を悪臭成分や可燃成分を発生させることなく、高価な貴金属を全く使用せずに200℃以下の低温で浄化することができ、しかもメインテナンスを不要とする新規な環境触媒の開発を目的としている。 本年度は、代表的なVOCである酢酸エチルを対象に、できる限り低温で完全燃焼できる触媒の開発を目指し、CeやGdなどの希土類酸化物およびMnやFeなどの遷移金属酸化物を母体とした触媒を調製した。調製した希土類酸化物において、立方晶蛍石型構造を有し、複数の価数をとることができるCeO2、Pr6O11およびTb4O7が酢酸エチルに対し高活性を示し、その中でもCeO2の酢酸エチル完全燃焼温度は200℃であり、最も活性が高いことが明らかとなった。一方、遷移金属酸化物触媒については、低温において優れた酸素放出特性を示したMn2O3、Fe2O3およびCo3O4が、酢酸エチルに対して高活性を示し、Mn2O3の酢酸エチル完全燃焼温度がCeO2と同じく200℃であった。 さらにMn2O3を母体としてCeイオンを添加したMn-Ce系触媒を調製し、酢酸エチルの酸化活性評価を行った。Mn酸化物にCeイオンを添加することにより酸素放出ピークが低温にシフトすることが分かった。これらの触媒は酢酸エチルを180℃で完全燃焼させ、Ptを使用している既報の触媒(10.0wt%Pt/CeO2-ZrO2-Bi2O3)と同程度の高活性を示した。 これら本年度の結果により、高価な貴金属を全く使用せずにVOCに対して高い活性を示す新規な環境浄化触媒の開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環境触媒の組成や構成比を検討したところ、希土類酸化物および遷移金属酸化物において、その酸化物が有する結晶構造の結晶性が高く、複数の価数をとることができるCeO2やMn2O3が酢酸エチルに対して非常に高い活性(酢酸エチルを200℃で完全分解)を実現している。さらに、Mn酸化物の格子内にCeイオンを固溶させたことにより、酸化還元能が向上し、効率よく活性種として酸素を供給できることを見出した。このMn-Ce系触媒はPtを使用していないにも関わらず酢酸エチルを180℃で完全燃焼させ、Ptを使用している既報の触媒と同程度の高活性を示し、環境触媒の酸素放出特性が酸化活性に寄与していることを明らかにした。 以上のように、当初予定していた計画どおり、研究が遂行できていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
高価な貴金属を用いずに酢酸エチルに対して高い活性を示したMn-Ce系触媒に対して、さらなる酸化活性の向上を目指し、詳細な組成の最適化や調製条件の検討を行う。さらに水蒸気や炭酸ガスなどの大気中に存在するガスが共存する場合における妨害効果および触媒の長期安定性についても検討する。また、粉末X線回折測定を用いて、新規な環境触媒の詳細な結晶構造解析を調べ、結晶構造の観点から高活性発現のメカニズムの解明を行う。加えて、走査型電子顕微鏡観察による触媒表面の直接観察、および比表面積・細孔分布測定などにより、触媒表面の形態および表面の多孔性を詳細に調べ、これらの結果と大気汚染物質の酸化活性との相関を明らかにするとともに、高活性をもたらす局所表面状態を明らかにする。 得られた知見を触媒設計にフィードバックすることにより、貴金属を使用せずに既報のPt系触媒よりも高活性な新しい安価な完全燃焼触媒の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
近隣の他機関所有の装置を用いて大気汚染物質の酸化活性の評価を行ったために、反応ガスなどの消耗品に未使用額が生じた。さらに、本校の予算で学会参加費や旅費を支出した。2019年度は、研究計画に変更はなく当初予定通りの計画を進め、前年度の研究費については、新規触媒調製のための試薬や酸化活性評価に使用する石英製の触媒反応菅などの物品の購入を予定している。
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