2018 Fiscal Year Research-status Report
温暖化に対する河川生態系の頑強性評価:微気象と連結性を考慮した適応策の構築
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18K18221
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石山 信雄 北海道大学, 農学研究院, 博士研究員 (50780821)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 気候変動 / 適応策 / 河川生態系 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、北海道および関東地域において、まず水温観測ネットワークの構築を行った。北海道地域においては、石狩川水系空知川流域に約30の水温ロガーを設置した。また、関東地域においては、利根川水系を中心に群馬県および長野県に約30の水温ロガーを設置した。続いて、北海道地域の観測地点においては、地質と水温レジームの関係を7-8月のデータを用いて予備的に検証した。一般化線形モデルにより、流域地質と気温が夏季平均水温に与える影響をモデル化した。その結果、河川水温は気温だけでなく流域地質に影響を受けており、特定の地質タイプが優占する流域はその他の流域に比べ、気温に関わらず夏季平均水温が約4℃低かった。湧水環境は一般に、年間を通して水温および流況が安定していることが知られている。北海道の同調査地においても、こうした冷水温河川では水位の変動性が低い傾向があり、これは、特定の地質タイプが優占する流域では湧水の寄与度が高い可能性を示唆している。また同地域において冷水性魚類であるハナカジカCottus nozawaeの生息密度を電気ショッカーを用いて調べたところ、前述した特定の地質タイプ(水温が低い)において生息密度が高い傾向があった。これらの結果は、申請者が仮説として挙げていたように、地質が湧水涵養量の空間的な異質性を流域内に創出すること、またその効果により気候変動下において頑強な地域を形成している可能性が示唆しているといえるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水温観測ネットワークを道内外で構築するに至った。また、サンプル数は限られるが、予備的に解析を実施し、当初の仮説を支持する傾向が認められた。以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目では、水温観測ネットワークの構築をおこなった。河川水温には年次変動性も見られ、短期間のデータのみの利用では誤った研究結果を導きかねない。2年目も引き続き観測とデータ回収を続け、より頑強な水温データを取得する予定である。また、本研究の達成に必要な、堰堤および魚類の分布データについても既存データの整理を進める。
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Causes of Carryover |
当初、水温・気温モニタリング地点の設定時の調査補助人員の確保を予定していた。しかし、現地での作業の簡略化や効率化を図ったことからその人員確保の必要性がなくなった。このため、人件費として計上していた額を使用せずに済んだことから差額が生じる形となった。残額について、翌年度は設置した温度ロガーのデータ回収のための旅費、または追加で設定する観測地点のための物品費、解析用のノートパソコンの購入等に主に使用を予定している。
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