2018 Fiscal Year Research-status Report
外来植物の生態系機能:送粉系を介して在来植物にもたらす正の作用の検証
Project/Area Number |
18K18225
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
江川 知花 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 研究員 (10765019)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 外来植物 / 送粉ネットワーク / 機能的役割 / 生物多様性 / 外来種管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
都市やその周辺では、外来植物がいて当たり前の生態系が長期間維持されている。このような生態系では、外来植物が生物間の共生関係の中に取り込まれ、何らかの機能を担っている可能性がある。たとえば、外来植物は概して開花数が多く開花期間が長いため、多量の花資源(糖や花粉)を長期間生産し、訪花昆虫の重要な餌として機能しているかもしれない。だとすれば、生態系管理の一環としての外来植物駆除は、送粉サービスの劣化を引き起こし、その意図に反して虫媒在来植物の衰勢や群集構造の変化をもたらすことも考えられる。この仮説を検証するため、平成30年度は、外来植物と在来植物が混生する都市近郊の植物群集において、外来・在来それぞれの種が生産する花資源量を定量し、外来植物由来花資源の訪花昆虫の餌としての重要性を検討した。 茨城県内の河川敷草地4サイトにおいて、単位面積当たりの開花数と、主要送粉昆虫の訪花数を開花種ごとに通年に渡って記録した。また、主要な開花種について、1花当たりの花蜜糖量および花粉体積を算出し、これらと開花数から各サイトにおける単位面積当たりの糖および花粉現存量を推定した。その結果、外来植物は、春と秋に、在来植物を大きく上回る量の糖・花粉を生産していることが明らかとなった。外来植物への訪花数は、春には在来植物への訪花数を大きく上回っていたが、その他の季節は在来植物と同程度かそれよりも少なかった。このことから、外来植物由来の花資源は、送粉昆虫の餌として常に重要性が高いわけではなく、季節依存的な役割を果たしているものと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
外来植物由来の花資源量を定量し、在来植物由来の資源量と比較しながら、送粉昆虫の餌としての重要性について通年で評価ができたことから、初年度計画を順調に達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、外来植物由来の花資源は送粉昆虫の餌として常に重要であると予想していたが、本年度の調査により、その重要性は季節によって変動する、という予想とは異なる結果が得られた。このため、外来・在来植物の花資源量とそれぞれへの訪花数調査を次年度も継続して実施し、同様の季節性が見られるかどうかを確認する。また、当該結果を早期にとりまとめて公表する。さらに、外来・在来植物の密度と送粉昆虫の訪花数との関係について解析し、「外来植物が同所的に高密度で存在する」ことが、送粉系を介し、在来植物にどのような影響を与えているかを検討する。
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Causes of Carryover |
当初は調査地までの交通費が多くかかると考えていたが、予想よりも近傍に調査地を設定することができたために交通費の支出が大幅に減り、余裕が生じた。本年度の調査結果を受けて、次年度も外来・在来植物の花資源量の定量を実施することにしたため、持ち越し分は花粉や花蜜採取用品の購入費として使用する計画である。また、初年度得られた結果が当初の予想とは異なる意外性のあるものであったことから、できるだけ早期の公表をめざし、そのための経費にも当てる。
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