2019 Fiscal Year Research-status Report
外来植物の生態系機能:送粉系を介して在来植物にもたらす正の作用の検証
Project/Area Number |
18K18225
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
江川 知花 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 研究員 (10765019)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 外来植物 / 送粉ネットワーク / 機能的役割 / 生物多様性 / 外来種管理 / 季節依存性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年度に引き続き、茨城県内の河川敷草地4サイトにおいて、単位面積当たりの開花数と送粉昆虫の訪花数を開花種ごとに通年で記録するとともに、主要な開花種の1花あたりの花蜜糖量および花粉量の測定を行い、単位面積あたりの外来・在来植物由来の花資源量とそれらの送粉昆虫の餌としての重要度を季節依存性を考慮して解析した。その結果、外来植物由来の花資源量は、6月および11月に急激に増加するパターンをみせ、昨年度確認された季節性が再現された。一方、在来植物では、昨年同様、春から秋までの間に花資源量の明瞭なピークは確認されなかった。2年間のデータを種レベルで解析したところ、外来植物の資源生産の季節性(6月・11月にピークが生じること)は、シロツメクサを含むマメ科、およびキク科の種によってもたらされていることが示された。すなわち、春~初夏にはマメ科、秋にはキク科の複数の外来種がほぼ一斉に開花し始めるために資源量のピークが生じていた。一方、在来種では、同じマメ科・キク科でも同時に開花する種は少なく、開花開始時期が種ごとに少しずつ異なるため明瞭なピークが生じないことが明らかとなった。送粉昆虫の外来植物への訪花数は、外来由来資源の多い時期に在来植物よりも多くなる傾向があったが、その他の時期は在来植物と同程度に留まった。本年度の調査より、外来植物由来の花資源は、送粉昆虫の餌として季節依存的な役割を果たしていることが改めて確認された。このことから、外来植物が送粉系を介して在来植物の繁殖成功に与える影響にも季節性があるものと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
外来植物由来の花資源量の定量化と送粉昆虫の餌としての重要性評価について、当初は初年度のみ調査する予定だったところを1年延長し、2年分のデータから研究開始時には考慮していなかった季節依存性を明らかにすることができたものの、その分、外来植物の開花密度に応じて送粉昆虫の在来植物への訪花頻度がどのように変化するのかについての解析を進めることができなかった。本解析は次年度に集中的に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
外来植物の開花密度と同所的に存在する在来植物への昆虫訪花数との関係を解析し、「外来植物が同所的に高密度で定着している」ことが、送粉系を介して在来植物にどのような影響を与えているかを評価する。これまでに得られた成果から、外来植物による影響には季節依存性があることが示唆されている。季節性を評価するためには、単年度のデータではなく、複数年にわたるデータが必要であることから、研究開始時に検討していた外来・在来植物の密度を操作した混植実験は行わず、これまでに取得した2年分の野外調査データから外来植物密度の異なる調査区のデータを抽出して解析に供することとする。また、これまでに取得した外来・在来植物の花資源量のデータをデータペーパーとして公表する。
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Causes of Carryover |
花粉や花蜜採取に用いる器具について、昨年度購入分を利用することができたほか、他の研究者から無償で譲り受けた分を使うことができたため、物品費の支出が大幅に減少した。また、実験補助者の花粉の計数技術が向上し、予定よりも短い時間ですべてのサンプルを処理することができたため、人件費の支出が減少した。持ち越し分は、データペーパー等の成果のオープンアクセス化のために使用する予定である。
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