2020 Fiscal Year Research-status Report
Permeability of dam reservoirs for stream fishes and population variability in isolated tributaries
Project/Area Number |
18K18226
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Research Institution | Public Works Research Institute |
Principal Investigator |
末吉 正尚 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(つくば中央研究所), 研究員 (70792927)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ダム湖 / 分断化 / 魚類 / 個体群 / 次世代シーケンサー / 集団遺伝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、河川に生息する魚類にとって、ダム湖が移動阻害になっているのかどうかを明らかにし、孤立した集団の将来の消失リスクが高まるか検証することである。今年度は、遺伝子情報からダム湖に注ぐ支川間の移動を評価した。前年度まで試していた遺伝子解析手法(マイクロサテライト)では、種や個体群によってPCR増幅が確認できなかったため、種に関係なく遺伝的な多型が検出できるMIG-seq法を用いた解析を進めた。カワムツ、カワヨシノボリを対象にMIG-seq法による塩基配列の決定を終えて、まずカワムツにおける遺伝的集団構造を明らかにした。その結果、流水河川本川に注ぐ4つの支川間では遺伝的な分化がみられず、お互いの支川を行き来している可能性が示された。一方で、ダム湖の本川に注ぐ5つの支川は遺伝的に異なる4つの集団に分かれ、流水河川よりも支川間の交流が少ないことが分かった。また、ダム湖河川で同じ遺伝集団に帰属した2支川は、他の3支川に比べて遺伝的多様度が高く、流域面積が大きい支川であった。大きな生息地内で多くの個体が交雑することで孤立前の遺伝子が維持され、高い多様性を保ってこられたと考えられる。さらにこの2河川の遺伝的多様度は流水河川の支川と大差なく、ダムができてからの経過年数においては、遺伝的多様性を維持するうえで十分な生息地の大きさであったことが示唆された。現在、カワムツより移動能力の低いカワヨシノボリでも同様の解析を進めており、今後他魚種の塩基配列決定を行うとともに種による違いと、孤立後に遺伝的多様性を維持するために必要な生息地の大きさを明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は本来計画していた遺伝子解析手法から次世代シーケンサーを用いたゲノムワイドな1塩基多型を検出できる手法へと切り替えて集団遺伝構造を明らかにした。新たな遺伝子解析手法の習得や膨大な遺伝子情報を整理・解析するためのPC環境の整備に時間を要してしまった。そのため、本来多種間の傾向の違いまで検証する予定であったが、今年度はカワムツにおけるダム湖河川および流水河川間の比較にとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
すでにシーケンス済みのカワムツ・オイカワのさらなる集団遺伝構造の分析を進めるとともに、アブラハヤ、オイカワのMIG-seq法による遺伝子解析を進めていく。また、すでに成果が得られた個体群構造(種数や種ごとの個体数)に関して、論文化を進め年度内の公表を目指す。
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Causes of Carryover |
成果の公表(論文投稿、学会発表)を行うことができず、残額が生じた。次年度に繰越予算を使用して、得られた成果の公表を行っていく予定である。
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