2020 Fiscal Year Research-status Report
What factor can affect deer population dynamics? Evaluation of bottom-up foctors at multiple temporal scales.
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18K18227
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Research Institution | Research Institute of Environment, Agriculture and Fisheries, Osaka Prefecture |
Principal Investigator |
幸田 良介 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食と農の研究部及び水産研究部), その他部局等, 主任研究員 (60625953)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 窒素同位体比 / 妊娠率 / RKFI / 生息密度 / GIS / 捕獲圧 / 履歴効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は追加収集したサンプルの分析を進めるとともに、各サブテーマにかかる統計解析を行った。 サブテーマ①(短期スケール)では2019年度に収集したサンプルを含め、オス42個体およびメス65個体の分析を行った。捕獲地点、性別、年齢(0歳、1歳、2歳以上)を記録するとともに、成獣メス個体を対象に妊娠の有無を記録した。また、各個体から体毛と腎臓を収集し、体毛の窒素安定同位体比分析を行うとともに、栄養状態の指標としてライニー式腎脂肪指数(RKFI)を算出した。GLMMによる解析の結果、農作物利用がシカの栄養状態を向上させていること、栄養状態の良さはシカの妊娠に強く影響していないものの冬期の死亡率の低下を通じて短期的なシカ密度増加に影響していることが示唆された。 サブテーマ②(中期スケール)では、2018-19年度のシカ生息密度分布の再調査の結果を解析し、以前のシカ高密度地域が消滅する一方で周辺地域に新たに高密度地域が発生するなど、シカ生息密度分布が大きく変化している状況を明らかにした。また、一部地域を抽出した解析から、局所的な大規模捕獲が1km程度の範囲内のシカ生息密度を減少させる効果がある一方で、より遠方の農地周辺にシカを移動させてしまう可能性があることが示唆された。今後は収集済みのシカ糞サンプルの安定同位体比分析を行い、農作物依存度や森林内の植物量を含めた解析によって、トップダウン・ボトムアップの両側面からシカ生息密度変動に影響する要因を明らかにする予定である。 サブテーマ③(長期スケール)では、シカ捕獲状況が大きく変動する以前の2014,2015年度のシカ生息密度分布に影響する要因を解析し、現在の捕獲圧や景観構造はほとんど影響しておらず、過去の分布域が強く影響していることを明らかにした。このことから、長期スケールでの議論では、履歴効果を考慮しておく重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全体としては当初の計画通り各サブテーマの調査および解析を終えられている。特に、サブテーマ①と③については全ての解析までを予定通り終了済みである。 一方で、サブテーマ②については野外調査および分析試料のサンプリングは予定通り終えられているものの、一部の窒素安定同位体比分析を実施することができなかった。これはコロナ禍の影響により、分析を行う共同利用機関への出張や分析作業が困難になってしまったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、コロナ禍によりずれ込んでしまっている窒素安定同位体比分析を行い、全てのサブテーマの解析を終了させる。既にサンプルの下準備と分析機関への共同利用申請は終えており、感染拡大状況を注視しつつすみやかに分析を行い、当初予定していた全ての解析を終える予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大にともない、予定していた窒素安定同位体比分析の一部を実施することができなかった。そのため当該分析にかかる作業と最終的な統合解析にかかる費用を繰り越して確保した。次年度使用額は、主に分析のための消耗品費と共同利用機関への出張旅費として使用する計画である。
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Research Products
(5 results)