2019 Fiscal Year Research-status Report
環境負荷削減と生活の豊かさを両立する消費パターンの解明
Project/Area Number |
18K18232
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
天沢 逸里 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (80804989)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | シェアリング・エコノミー / レンタルサービス / サブスクリプション / 耐久消費財 / 消費者行動 / 環境影響評価 / 消費と生産パターン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、環境負荷削減と生活の豊かさを同時に達成する消費パターンを明らかにすることである。当該年度は、①衣服を対象とした多様な消費パターンにおける環境負荷の算出と、②複数製品の複合的な利用実態と利用動機の把握に臨んだ。 まず、昨年度作成した消費パターンの分類表を用いて、様々な衣服のビジネスモデルを整理し、消費パターンごとの環境影響評価を行った。調査対象としたビジネスモデルは、普段着、冬服、礼服の販売モデルとレンタルサービスである。販売モデルは統計・文献調査から、その他のビジネスモデルはインターネットを用いた調査が主であった。また、新しいビジネスモデルである月額制の洋服サブスクリプションにも着目し、実態を把握するために、そのビジネスを手がける企業にヒアリングを行った。これらのヒアリングと文献調査から、衣服の消費パターン毎の1着あたりと着用あたりの環境影響評価を行った。その結果、所有する場合からレンタルやサブスクリプションへ移行することで、1着あたりの温室効果ガス排出量(GHG)はクリーニングの負荷により増加することが分かった。着用あたりでは、1着あたりのライフサイクルGHG排出量が大きく、一般的に着用機会が限られる衣服であれば、所有よりもレンタルの負荷小さいことが示唆された。これは、レンタルの方が衣服の着用回数が多いと設定したことによる。着用回数はヒアリングからシナリオを作成したが、購入とレンタル、そしてサブスクリプションで着用回数が実際変わるかどうかは、まだ把握できていない。 次に、様々な消費パターンの複合的な利用実態と利用動機を把握するため、一般消費者を対象としたワークショップを開催した。ワークショップでは、衣服、自転車、家電のシェアリングに向けた消費者の障壁を抽出した。ワークショップの知見は大規模なアンケート調査の事前調査として捉えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施計画で研究対象を予定していた5製品(電気洗濯機、乗用車、自転車、書籍、被服)の環境影響評価を終えた。これまでの予定では、当該年度に利用実態を把握するためのアンケート調査を完了する予定だったが、その予備調査にとどまった。アンケート設計に必要な予備調査は終えたので、今年度の前半にアンケート調査を実施したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
当該年度まで、対象とする5製品における現状の消費パターン、環境影響、そしてそれらのシェアリングに向けた動機と障壁の予備知識を蓄積することができた。今後はこれらの解析結果から仮説を立て、その立証に向けて大規模なアンケート調査と社会実験を遂行する。社会実験は感染症の拡大状況に応じて遂行方法を検討し、実施が難しいと判断した作業は接触を伴わないデータ収集方法(例えば、テレビ会議を通じたインタビュー)に切り替える。また、被験者数が当初の予定通り集まらなかった場合は、デプスインタビューといった質的手法へ眼点を移し、質的な解析方法から仮説立証を試みる。
|
Causes of Carryover |
当該年度中にインターネットによるアンケート調査を実施する予定であったが、年度内に実施できなかったため、次年度使用額が生じた。翌年度にアンケート調査を研究計画どおり実施することで、助成金を使用する。
|