2020 Fiscal Year Research-status Report
環境負荷削減と生活の豊かさを両立する消費パターンの解明
Project/Area Number |
18K18232
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
天沢 逸里 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (80804989)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | シェアリング・エコノミー / プロダクト・サービス・システム / レンタルサービス / 耐久消費財 / 衣服 / 環境影響評価 / 消費者行動 / 消費と生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、環境負荷削減と生活の豊かさを同時に達成する消費パターンを明らかにすることである。当該年度は、主に衣服を対象とした[1]ライフサイクルモデルの構築と、[2]シェアリングビジネスの評価手法の構築をした。また、感染症の拡大が消費者の行動と意識の転換に至ったことから、[3]コロナ禍による消費の変化を調査した。 [1] 衣服ライフサイクルモデルの構築:衣服を所有以外の消費パターン(例:シェアリング)で使用した際、衣類の種類による環境負荷増減効果を明らかにするために、衣服ライフサイクルモデルを構築した。製造段階では素材、デザイン、季節といった衣服の特徴を、使用段階では着用回数や洗濯頻度を入力値とすることで、衣服のライフサイクルにおけるGHG排出量を計算するツールを構築した。本ツールを使い、低環境負荷を実現する消費パターンと製品の組み合わせを定量的に明らかにできると考える。 [2] シェアリングビジネスの評価手法:所有に依らない消費パターンにおける製品の機能単位は、従来の所有における機能単位と異なる。この異なる機能単位による環境影響を分析するため、衣服シェアリングが提供するサービスから複数の機能単位を設定し、GHG排出量を計算した。その結果、ある機能単位ではGHG排出量の差異が所有とシェアリングで多大になることが示唆された。 [3] コロナ禍の消費行動:コロナ禍における消費行動の変化を調査すべく、シェアリングサービスの動向を、事業者ヒアリング等を通じて調査した。シェアリングは従来の所有と比べ、製品を通じて他人との接触が増えるため、コロナ禍では停滞すると考えられた。調査の結果、シェアリングが必ずしもコロナ禍で停滞するとは限らないことが分かった。感染対策を投じたシェアリング事業は成長を見せた上、コロナ禍によって新たなニーズが生まれ、それらがシェアリングと合致した事業もあった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの予定では、当該年度に利用実態を把握するためのアンケート調査と社会実験を行う予定であったが、コロナ禍によって人々の消費行動と意識が大きく変化したために、その変化を把握する調査に注力した。さらに、対面の社会実験の開催がより難しくなったため、別方法でのデータ収集方法を模索することとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
当該年度まで、対象とする5製品における現状の消費パターン、環境影響、そしてシェアリングに向けた動機と障壁の予備知識を蓄積し、更にコロナ禍の社会情勢を踏まえた消費者行動の変化を調査することができた。今後はこれらの解析結果から仮説を立て、その立証に向けて大規模な消費者アンケート調査と社会実験を遂行する。 アンケート調査では、本研究において対象とした製品の消費パターンの利用状況と利用同期について、1000人を対象にインターネット上のアンケート調査を実施し、消費傾向を定量的に分析する。その調査結果をもとに、消費パターンにおける環境負荷と生活の豊かさを総合的に分析する。 アンケート調査の研究結果をふまえ、消費パターンにおける環境と生活の豊かさの関係に対して仮説を立てる。仮説検証に向けて、社会実験を行う。コロナ感染状況が2021年度においても好転しない場合は、非接触型の社会実験、または質的アンケート調査に切り替える。社会実験から、製品ごとに複数の消費パターンにおける消費の相対関係を分析する。製品を所有するのに比べて、環境負荷が減り、豊かさが増える消費パターンを特定する。
|
Causes of Carryover |
2021年度に使用額が生じた理由は、2020年度に遂行予定であったアンケート調査を2021年度に持ち込むためである。2020年度にアンケート調査に踏み切らなかったのは、感染症拡大により、消費者行動と意識が変化したため、その変化の調査に注力したためである。
|