2021 Fiscal Year Research-status Report
環境負荷削減と生活の豊かさを両立する消費パターンの解明
Project/Area Number |
18K18232
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
天沢 逸里 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (80804989)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シェアリング・エコノミー / ファッション / 消費者行動 / サービス設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、環境負荷削減と生活の豊かさを同時に達成する消費パターンを明らかにすることである。2021年度は、[1]サステイナブルな衣服シェアリングサービス設計、[2]衣服シェアリングビジネス提供者の意識調査、[3]シェアリングサービスの類型化に取り組んだ。 [1]衣服を対象としたサステイナブルなシェアリングサービスの設計を目的に、環境負荷削減と消費者選好を満たすシェアリングサービスの特徴を具体化した。アンケートから消費者がシェアリングしたい衣服の種類やサービスの利用意向を分析し、所有とシェアリングにおける着用日数や廃棄までの期間も設問することで、シェアリングによる環境負荷を評価した。結果から、シェアリングによる環境負荷削減が見込める服が限定的であることが示唆された。所有時の着用回数が多い衣服には、利用者が選好するサービスを付加し、シェアリング回数を増やすことでサステイナブルな衣服シェアリングサービスを設計できると考える。 [2]カナダの研究協力者と共に、カナダで衣服シェアリングサービスを手がける事業者の意識調査を行った。インターネット調査とインタビューから、衣服シェアリング事業者が捉える事業のサステイナビリティへの貢献と、環境負荷削減に繋がるビジネス・プラクティスを分析した。結果、多くのシェアリング事業者は、衣服シェアリング提供そのものがサステイナビリティへ繋がると考えていた。また、シェアリングサービスはブランド物や流行服を積極的に取り扱うことがわかり、これらのシェアリングが環境負荷を削減しうるかを評価したい。 [3]シェアリングの提供価値という切り口から、シェアリングで提供する製品の類型化手法の開発を試みた。その結果、シェアリングにおいて環境影響の増減要因である消費者行動やサービス形態は、製品の様々な特徴に影響されることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究者の産休・育休取得に加えて新型コロナの脅威も続き、当該年度はインターネット上のアンケート調査と、シェアリングサービスの類型化の再考にとどまった。最終年度である2022年度の前半には、当初の研究計画通り、仮説立証のための社会実験を実施したい。年度後半に全ての成果をまとめ上げられるよう、社会実験と準備を同時に進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度まで、対象とする5製品における現状の消費パターン、環境影響、そしてシェアリングに向けた動機と障壁の予備知識を蓄積し、衣服を対象に消費者アンケート調査を実施した。最終年度となる2022年度では、アンケートの解析結果から得た仮説の立証に向けて、社会実験を遂行する予定である。当初、社会実験は5製品を対象とする予定であったが、仮説立証に向けた参加者数と調査に有する時間に限界があることから、衣服のみを対象とする。多様な衣服を対象とすることで、環境負荷削減と生活の豊かさを同時に達成する製品の特徴を抽出し、それに資する消費パターンを具体化する。また、社会実験の一環として対面での質的インタビューを計画していたが、新型コロウィルスの感染状況も踏まえ、インタビューのオンライン化を進める。 また、最終年度の取りまとめとして成果を積極的に国内外に発表する。
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Causes of Carryover |
2021年度は研究代表者が産休・育休を取得したことから、実質の研究期間は当初より短くなり、研究計画を大幅に変更した。また、コロナ禍により打ち合わせや全ての学会がオンラインとなったため、旅費が発生しなかった。 最終年度となる2022年度は、計画していた残る研究作業(主に社会実験)を遂行するため、そして学会参加や論文投稿による成果報告に助成を使用する。
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