2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K18241
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Research Institution | Central Research Institute of Electric Power Industry |
Principal Investigator |
小松 秀徳 一般財団法人電力中央研究所, エネルギーイノベーション創発センター, 主任研究員 (40462882)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 血縁選択 / マルチエージェントモデル / ナッジ / 情報提供 / アンケート解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
未来の世代に影響を与えると認知したリスクを大きく評価する人間の心理傾向が、どのような生物学的進化の過程を経て形成されたのかを探るシミュレーションモデルを構築した。このモデルから、環境が穏やかであればリスクを大きく評価し、厳しければリスクを小さく評価することなどに加え、環境の厳しさによらず、血縁者から支援されている個体ほど極端なリスク忌避が緩和される傾向を持つことが示唆された。これらの知見を踏まえ、血縁者から支援を受けていることを伝えることで、現実世界においても極端なリスク忌避が緩和され得ることを示すため、インターネットアンケート調査による情報提供実験を行った。この実験によって、工業化による大気汚染リスクを事例として、設計したメッセージが意図した効果を持つことが示唆された。 情報提供設計の工夫などによって直感に訴えかけ、選択肢や経済的インセンティブに影響を与えずに、より良い意思決定を促す方策は、「ナッジ」として注目されてきており、またいくつかの成功例が社会実装されてきた。しかし一方で、ナッジを体系的に設計する方法論についてはこれまで十分な検討がされてこなかった。本研究活動は、進化・適応のメカニズムを考慮したシミュレーションモデルに基づいて、ナッジを設計する方法論を提示するものであり、実際にこの方法論に基づいて設計したメッセージが、現実世界で効果を持ち得ることを確認しつつある、という点に意義があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2019年度にアンケート調査による情報提供実験を行い、情報提供の効果を確認する想定だったが、2018年度後半の予備調査として実施したアンケート調査において、既に一定の情報提供効果を確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に実施したアンケートによる予備調査を踏まえ、詳細化した本調査を実施し、より多面的に属性や心理特性に関するデータを回収する。これらデータの解析を行うことにより、どのような属性において情報提供の効果が高いかを把握し、効果をさらに高めるための方策を検討する。また、学会発表や論文執筆などを通じた研究成果のアウトリーチをより積極的に進めて行く。
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Causes of Carryover |
2018年度のインターネットアンケート調査については、当初の想定よりも少ないサンプル数で十分に情報提供の効果検証が可能であることが判明したため、小規模なサンプル数での実施とした。2019年度は学会参加と、より大規模なサンプル数でのインターネットアンケート調査が主たる使途となる見込み。
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