2018 Fiscal Year Research-status Report
天然資源依存経済におけるマクロ経済と産業の推移に関する分析
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18K18248
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
中瀬 一恵 (出町一恵) 東京外国語大学, 現代アフリカ地域研究センター, 講師 (20709753)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 天然資源 / 債務 / 金融 / サービス |
Outline of Annual Research Achievements |
H30年度は,天然資源に依存するアフリカの国の一つであるガーナ国において,非採取産業部門に関する現地調査を行った。ただし,当初想定していたような製造業や農業分野ではなく,急速に拡大している金融・サービス部門の代表である銀行(都市部,および地方・農村)と,その監督機関である中央銀行,財務省,証券取引所などでの聞き取り調査を2018年8月25日から9月12日まで実施した。金融セクターの拡大は経済成長に伴ってみられる現象である一方,性急な拡大は金融機関の脆弱性を高めて国内マクロ経済の不安定化にもつながる恐れがある。実際,2018年中にはガーナで複数の銀行が実質国有化・統合されるなど,金融危機一歩手前のような状況が見られた。また一方で,農業セクター向けの金融サービスは停滞状況にあり,このような金融・サービス部門の課題について調査・分析を行うことは,非採取産業部門の経済の成長を考える上で重要である。また,天然資源依存経済の国内金融・サービス部門に密接な関わりを持つ,国際資金の流入などについても情報収集・分析を行った。特に対外債務については,ほかのアフリカ諸国も含め分析した論考を,日本国際経済学会で報告したほか,自身が所属する東京外国語大学現代アフリカ地域研究センターのワークショップでも報告し,Working Paperとしてまとめた。ただし,学務などによる日程調整の都合で,当初予定していた年度内2度目の現地調査は行うことができなかった。この分はH31年度に繰り越して実施していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は資源輸出依存経済における製造業や農業など部門について,その衰退要因に関連した分析を想定していた。しかし,H30年度の調査はサービス部門,特に金融セクターの調査に重点が置かれた。本研究課題の問いは資源輸出依存であることによる国内経済への影響を明らかにすることであり,対外債務や資本流入とも密接にかかわりのある金融セクターに焦点を当てることに大きな問題はないと考える。H30年度は当初予定していた通り外貨建て政府債務の増加による国内マクロ経済への影響について調査・分析を進め,国内金融システムに変化が生じつつあることを明らかにすることができた。また特に政府債務に関しては論文の執筆も進んでおり,進捗はおおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
H31年度は,ガーナ国内の金融システムの変化についてより詳しく調査と分析を進めていく。また,金融システムの変化によって製造業や農業部門へどのような影響があるかについても関心を持って調査する。H30年度にまとめた論考は他の資源依存アフリカ諸国も含めた分析であったが,今後はガーナ国内の状況についても調査を進めるとともに,アジア諸国で90年代に起きた金融システムの変化とも比較することを視野に入れ進めていく。その際,ガーナについての論考はガーナ人の共同研究者との共同研究をより進められるよう努力していく。またアジアとの比較については,アジア経済研究者との情報交換・議論などが行えるよう,可能性を探っていく。
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Causes of Carryover |
H30年度は2度の海外調査を予定していたが,共同研究者を日本に招聘したスケジュールの関係で,2度目の調査を実施できなかった。2度目の渡航で予定していた調査はH31年度に実施する予定である。
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