2018 Fiscal Year Research-status Report
イスラーム経済の新潮流:ワクフ(寄進財産)をめぐる法学革新と代替的福祉制度の創出
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18K18251
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
KHASHAN AMMAR 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 研究員 (70814888)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ワクフ(寄進財産) / イスラーム経済 / イスラーム法学革新 / イスラーム福祉制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、イスラーム法の典拠であるクルアーンとスンナ(預言者慣行)の解釈によって、イスラーム法の重要な一部門として歴史的に展開されてきたワクフ制度とその現代的革新について研究することにある。平成30年度は、研究計画にそって次の3項目にわたる研究活動を行った。 1.初期イスラームから福祉制度の一部としてのワクフの概念とその実行の展開について、法学上の歴史的な文献と史料によって再構成し、考察を進めた。 2.現代の代替的福祉制度の一部としてワクフについて、イスラーム法における福祉制度の他の構成要素、特に伝統的な喜捨(ザカート)と比較しながら、相互の関係性及びワクフの活用分野について明らかにした。 3.ワクフ革新に関するイスラーム法学者のファトワー(法学見解)の収集のため、マレーシアでフィールドワークを行って、文献・データ収集のほか、マレーシア連邦政府が2004年に設立した Jabatan Wakaf Zakat Dan Haji (JAWHAR)(ワクフ・ザカート・ハッジ基金)などの財団等での聞き取り調査をおこない、また現地研究者との人的ネットワークを構築することができた。現代の新型の代替的福祉制度の創出の一部としてのワクフの革新に関して、最新の研究動向を把握することができた。その内容の整理と分析を進めている状態である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
達成度について、以下の二点から順調な進展と自己評価した。 1.初期イスラームから20世紀にいたるまで典拠および法学的解釈を研究し、イスラーム法学文献におけるワクフの概念とその詳細化の過程がおおむね明確となった。さらにイスラームにおける福祉制度の他の要素との比較によって、現代におけるイスラーム福祉制度がワクフに関するイスラーム法学の柔軟性に依拠しており、そこからどのような可能性が開けるかの眺望が明確になった。 2.フィールドワーク調査を通じて資料の収集が順調に進んだ。研究機関及び研究者との学術交流を推進し、今後の研究に資するネットワークも形成することができた。対象地域におけるワクフ(寄進財産)の革新の実態調査を次年度以降に進めるめどがたった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、代替的福祉制度の創出としてのワクフ、特に国際的な運動として2016年に活動を開始した Waqf World(ワクフのクラウドファンディングのプラットフォーム)を中心として調査を行い、マレーシアとシンガポールにおける新潮流の法学革新を明らかにすべく研究を遂行する。また、学会・研究会等でこれまでの成果を発表し、さらなら研究の進展のために専門的なコメント、アドバイスを得る予定。
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